第340話 上限突破な赤井兄妹

 「なんか、いきなり政府の許可が取れちゃったよ。

 どうする、ショーンとトーマス。」

 「「は?」」

 「リュートが……日本のダンジョン部隊の桶谷閣下が動いてくれた。」

 「えっ⁉」

 「マジですか⁉」


 どんどん進んでしまいそうな話を止めたのは、新しい声だった。


 「すまんが、ちょっと待ってくれないか?」


 声の主を振り返って、カウボーイ達も、被災者も、報道陣も、妹ズさえ驚いた。


 わかっていないのは青だけだ。


 イギリス国王の時もそうだったが、青君、他所の国の偉い人に興味無さ過ぎ。


 ……

 いや。

 日本の総理大臣が出てもこんな感じかもしれない。


 急に現れた……

 『移動の翼』を使った緊急転移だ。


 声をかけてきたのは秘書官を伴った合衆国大統領、その人だったのだ。


 「誰?」

 「兄さん、相変わらずですねぇ。」

 「兄貴‼️大統領‼️

 この国で1番偉い人‼️」


 「ああ。」


 説明された、青は一言。


 「この愚策の最高責任者か。」


 ……

 いや、キツい。


 しかしお陰で、日本からの救助隊に話しかけている場合ではない、と気が付けた。


 「すまない。

 少し時間をくれ。」


 被災者達に向き直る。


 わかっていることだが、彼ら……

 人前でカリスマ性を持って話さねばならない立場の人間は、間違わないよう、もっとも大きな効果を生むよう、原稿をまとめる専門家がいる。


 急に決まったラスベガス訪問、勿論原稿は無いから自分で話すしかない。


 「まずは謝罪したい。」


 こちらの人としては珍しく、深く頭を下げて1分ほど、そして語り出す。


 「このダンジョン災害は人災だった。

 ボトムアップ式だが、最終的には私が署名して計画は実行された。

 アメリカが認めた計画で、多数の死傷者が出たのだ。

 私はここに約束する。

 十分な保障を。早期の街の復興を。

 申し訳ないが命は戻せない。

 それでも出来る限り尽力することを誓う。」


 「ああ、なら正確な被害者数がわかったら教えて欲しい。」

 と、青。


 「今回のダンジョン反転は、人間側がルールを破ったから起こった。

 人間の不見識が原因で間違いないし、裏切られた中ボスには同情するけど、だいぶやり過ぎてくれたからな。

 あまり意味は無いかもしれないけど、殺した人の回数、あの馬鹿牛ぶっ倒すから。」


 「兄さん、夏休み中じゃ終わりませんよ。」

 「休みの度にやりに来る。」

 「あー、兄貴、言い出したら止まらないし。」


 常識外れの発言も、妹達の対応から『可能』なんだと思い知る。


 「なら、私らも1回ずつ倒しとく?」

 「だね。

 中ボス倒さないと、兄さんに付いていけないし。」


 ……

 いや、少女達まで、なにか言い出した。


 ある意味最強兄妹だった。


 「で?

 何を俺らに言いたいの、大統領?」


 兄の方が尋ねてくる……

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