第333話 すっかりいじけたでかミノさんに会いたい

 一方、映画館内に残された人がいないことを確認し……

 

 Fダンジョン前まで移動した青だったが、盛大なため息になる。

 「スゴいな、これ。」


 ダンジョンからは赤い霧が吹き出し、周囲に立ち込める薄くなった部分と違い、発生源は濃厚だ。

 霧じゃなく、液体に近いくらいの吹き上がる赤……

 恨みや怒りなどの『負』そのものだ。


 紺が付与魔法かけてくれなかったら、さすがにヤバかったな。


 青のステータスをもってしても、ダメージが入りそうな濃さだった。


 「じや、俺行ってくるけど、白と水まんじゅうはここで待ってて……」


 彼らでもダメージが入りそうだ。


 『待っててくれ』と言おうとした青に、白がスリスリ、水まんじゅうがポヨポヨ。

 体を擦り付けた途端、一瞬だけ2匹が光り、青と同じ魔法が付与される。

 

 クロ曰く、

 『青をスゴい気に入っている』らしい2匹は、

 『これで付いていける』と胸を張る。


 白と水まんじゅう、彼らも底が知れない。


 1人と2匹でRTAだ。


 とにかく急がないと紺に負担がかかるから、弾き飛ばす勢いでモンスターを蹴散らしながら下へ、下へ。


 ラスベガスFダンジョンが、広くなくて本当に良かった。

 町田みたいに広ければ埒が明かない。

 まあ、階段がボス部屋まで直通の町田の場合、フロアを迷うことも無いが……


 青はもうわかっている。


 このダンジョンの上階のモンスターは皆カース(呪)化していたが、これは中ボスのキング・シャーマン・ミノタウロス・エンペラーの影響だ。


 彼(彼女?)が人を恨んでいるから、彼が管理する上層階はカース化した。


 上層階のモンスターに意思はない。

 ある意味中ボスの分身であり、遠慮無く倒して問題はない。


 カース化しても律儀に落とすアイテムは、『倉庫の腕輪』に拾って走る。


 アイテムドロップは、つまりダンジョンの譲れないルールなのだろう。


 「うっしゃ、とうちゃーく‼」


 都合2時間ほどで199階層についた。


 レイドバトルの時ショーンを運んだBチームが、しっかり地図を用意したうえで丸1日かかっていることを思えば、どれほど急いだかわかるだろう。


 けれど、紺は5、6時間が限界と言ったし、人命救助にも1、2時間は使っている。


 もうそれほど余裕はなかった。


 「んじゃ、行くか。」


 濃厚な赤い霧の中、青を先頭に200階層に入る。


 カース化前のダンジョンのルールなら、青以外は199階層に戻される。


 物理的にも1対1を強いるはずが、今回出入口は閉まらなかった。


 人間にひどい裏切りを受けた中ボスは、すっかり荒んでしまったらしい。


 「貴様らも大勢でワシを弄るのか?」


 低音が響く……


 キング・シャーマン・ミノタウロス・エンペラーは、取り合えず男の子(もしくはおっさん)決定。


 いや、言ってる場合か?






 RTA(リアルタイムアタック?)という言葉、この手の小説でよく見るのでとりあえず使ってみたかったのです。

 使用法、「?」だったらスイマセン。

 

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