第332話 小さなカウボーイは卑怯者にはなれない
「「あっ⁉️」」
「「「ショーン‼️」」」
思わず声が出てしまった。
ダンジョン化したラスベガスの外で見守るしかないカウボーイ達は、不意に目の前に転移してきた、アイドル的存在の少年を見とめる。
ショーンは……
幼い頃から支部に出入りして、本人だけは大人に……
15歳以上に見られると思っていたが、精一杯背伸びする子供を、カウボーイ達は可愛がっていた。
それだけ目をかけていた少年に、今多大な迷惑と負担をかけている。
その事実が、謝ることも誤魔化すことも出来なくし、多分1番可愛がっていた支部長さえ、口の中でパクパク言葉を捏ね回すだけ、実際には何も言えない。
そんな大人達の戸惑いを余所に、ショーンは素早く辺りを見回し、広めのスペースを探す。
そこに、
「「うわっ⁉️」」
「えっ‼️」
映画館にいた避難民を召喚する。
一瞬で、抱えていた子犬までも完璧に、100人余りが助け出された。
不幸中の幸いだが、ショーンが彼らを助けたのはダンジョン化の極初期で、モンスターに実際に襲われる直前。
「ああっ‼️」
「助かったぞ、俺達‼️」
散歩していた夫婦、ジョギング中のカップル、幼い子供2人の手を引いた母親など、実際のところ、ダンジョン化した地域に他の家族や知り合いがいたかもしれないが、取り敢えずの『大切』を失わずに済んだ人々だ。
少しだけホッとした。
盛り上がる彼らからやっと目を離せたショーンだが、
「……」
続いて目にしたラスベガス支部の仲間達は、何か話したいような、戸惑った表情のまま近寄っても来ない。
彼らはそこまで厚顔無恥にもなれず、どうしていいかわからないだけだが、
『ああ、やはり嫌われてしまったな。』
と、ショーンは少し寂しかった。
そして、更にそこにいた避難民達を……
青がギリギリを助け出した人々を見た時‼️
放心したように、あるいはハラハラと涙を流し、頭を抱えて震えている人々のあまりの少なさに衝撃を受けた。
待ってくれ。
ショーンは地元だけに、今ダンジョン化した街並みにどれくらいの人が住んでいたか、知っている。
これって、1割も助かっていないのでは?
自分達がしでかした事の意味を、形にして見せられた。
もっと本気で訴えていれは?
いや、断りきれずキング・シャーマン・ミノタウロス・エンペラーの前に立ったとしても、意思を持って召喚しなければこんなことにはならなかった。
僕は立場を無くすだろうが……
そうするべきだったと、同じ嫌われるなら街を守るべきだったと、改めて思う。
「あー、あんただ‼️」
急に知らない声が響いた。
その男は首からカメラを下げていて、ICレコーダーを持っている。
「あんた、ダンジョン前にいた人だろ?」
彼は、あの瞬間ショーンが逃がした報道関係者だった。
「いったい何が起こったんだ⁉️」
それは職業柄当然だか、あまりに無神経な振る舞いだ。
ショーンを守りたかった。
高レベルカウボーイ達が、支部長が口を挟むその前に、ショーンは言った。
「僕達は、『1対1』のボス戦を『多対1』にして戦った。
僕達はダンジョンの怒りをかった。
僕が、仲間を召喚したんだ。」
と。
「僕が原因だ。」
と……
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