第331話 もう1度、人を信じてくれたなら

 「ショーン‼️」


 青、紫に似てきた。


 「良く頑張ったな‼️」


 顔中で笑うスゴい笑顔で、場にそぐわない明るさで、大きく手を振り歩み寄る。


 まあ、余った方の手で、襲ってきたカース・ミノタウロスを一刀両断しながら、だが。


 白と水まんじゅうも、モンスターを蹴散らしながら近付いてきた。


 「え?

 なんで、ミスター?」


 いるはずの無い人の登場に戸惑うショーンだが、

 「電話くれたじゃないか。」

 と、遊びに誘われた子供みたいな返事。


 「あーあー、ひどい格好だなぁ。」


 緑茶のペットボトルから、藍色の水をかけられると、

 「え?」

 その場で、赤い霧にやられあちこちミミズ腫れになった傷も、ここまでの戦闘で生じた無数の傷も、全快した。


 「中級?」

 「おう。中級回復薬。」


 余った分はらっぱ飲みし、

 『くれ、くれ』とすり寄ってきた、白と水まんじゅうにも。


 味わいは無味無臭、水と変わらない初級と上級に比べ、中級は甘い(なにせ、初級+はちみつだし)。


 うん、うまい‼️


 あんまりに普通で、あんまりに日常過ぎて、逆に泣きたくなるショーンだった。


 「ごめん、ミスター。

 僕、止めれなかったよ。」

 「ああ。

 状況考えれば『気にするな』とは言えないし、言われても困るだろうけどな。

 ただ、お前はよくやったよ、ショーン。

 最後まで抵抗したし、こうなったあとも1人気をはき動いている。」

 「?」

 「どうしていいかわからなくて、フリーズしていた連中の100倍ましだ。」


 「ああ。」


 納得した。


 どこからも来ない援軍。


 そう言うことかと思っていると、

 「ああ、違うぞ。

 今は入ってこれなくしてる。

 あいつらじゃ足手まといだし、ダンジョンがこれ以上広がらないように、俺の妹が『結界』で押さえてるんだ。」

 とフォローが入る。


 「俺は足手まといだと思えば、お前だって結界外に放り出したよ。

 胸を張れ、ショーン。

 お前は強いよ。」


 不意打ちの誉め言葉に泣きたくなる。


 ひっきりなしに襲ってくるモンスターを打ち倒しつつ話した。


 「この先真っ直ぐ……

 500メートルくらい先の結界の外に、君の仲間がいる。

 まずはそこまで移動しろ、ショーン。」

 「はい。」

 「で、映画館の人達をパーティー召喚で引っ張り出せ。

 その間の守りは俺達に任せろ。」

 「は、はい。

 でも?」

 「?」

 「ミスターは?」


 聞かれた青はニッコリ笑う。


 「俺達はここの人達が助け出されるのを確認して、ダンジョンに潜るよ。」

 「え?」

 「どうなるかはわからない。

 でも、『ダンジョン反転』を何とかしないと、妹にも押さえきれなくなってくる。ラスベガスが崩壊してしまう。」

 「……」

 「俺は取り敢えず、ダンジョンボスに会ってくるよ。」

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