第7話 少年は仲間を見捨てない
子ぎつねは生きているようだった。
パッと見、外傷はない。
腹が上下しているから、呼吸はある。
ただ、その命は風前の灯で……
オークはダンジョンにいた子ぎつねを、オヤツ代わりに拾ってきたのかも知れない。
いや、万にひとつ、億にひとつならば、
『ペットとして可愛がるために‼️』と言う可能性はある。
なにせ、鳴き声だけでも意表をつかれたのだから。
けれど、それを期待する訳にはもちろんいけないのだ。
表現すれば長いが、判断は一瞬だ。
いわゆる火事場の馬鹿力で、瞬時に状況を読みきった青だった。
とにかく、きつねは助けなければならない。
山で倒れているのを助け、1週間ほど食べ物を運んだ。
少なからぬ縁があるのだ。
なら、どうする?
青は現実主義者だ。
『将来の夢は?』と聞かれれば、間違いなく、
『親父の後を継ぐ』と答えるだろう。
勉強は得意じゃない。
運動神経には自信はあるが、選手になり、それで食べていけるとも思わない。
だから『家業を継ぐ』と答えるタイプの少年は、頭の中で正解を探す。
「コンちゃん‼️」
ひまわりが騒いでいたが……
決めた‼️
ガシャン‼️と音を立てて、オーロラ号のスタンドをかけた。
脇に手を入れ、後ろから持ち上げたひまわりを、そのまま子供椅子にイン。
「ひま‼️ちょっと待ってて‼️」
そのままオークに向かって走り出した。
「ミャアーッ‼️」
甲高い声をあげて(怒った?)、オークが青を迎え撃つ。
丸太のような腕を振り上げた。
イメージでは?
オークはこん棒を持っている。
良かった、素手だ。
これなら多分?
ブオン‼️と風切り音が聞こえそうだ。
けれど、パンチなどの合理的な動きではなく、ただ愚直に、自らの腕をマサカリのようにうち下ろす。
これなら、間違いなく大丈夫‼️
青は、野球の滑り込みの要領で腕をかわし、オークのパンチを掻い潜る。
下が岩肌だから、気を付けて、気を付けて。
そのまま子ぎつねを掬い上げ、胸に抱えて立ち上がった。
よし‼️
全力で、振った拳を避けられて、オークは大きくたたらを踏む。
まだ体制が整っていないから、青はその真横を抜けて駆け戻った。
「待たせたな‼️ひま‼️」
スタンドを外して、オーロラ号に跨がった。
子ぎつねは、後ろかごへ。
全力で‼️
走り出す。
「ミャーッ‼️ミャミャーッ‼️」
かわいい声で、鬼のように顔を歪め吠えるオーク。
……
うん。カオス。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます