第6話 少年はきつねを見つける

 状況は、考えうる限り最悪だった。


 ここは多分、おそらく……

 

 いや、もう認めてしまおう、ダンジョンだ。


 ダンジョンだからか、普通にイメージする洞穴は真っ直ぐ一本道で続いているのに‼️

 通路には曲がり角があり、部屋があり、辻があり……


 要は完璧に迷ってしまった。


 妹を、必死で追いかけ走りまくり、オークからもひたすら逃げた。


 ダンジョンの壁は薄く光り、場所場所の特徴がない。

 出口の方向がわからない。


 絶望的な状況なのに、

 「ねえ、にぃ?」

 「ん?」

 「さっきの、何?」

 「オーク。」

 「オークって?」と、ひまわりの質問が止まらない。


 小学1年生女子が、『オーク』と言われてすぐ分かる訳が……


 あったら怖い。


 だから絶望的なのに、気の抜けた会話が続いていくのだ。


 「オークは……」

 「?」

 「2本足で歩く豚だよ。」

 「豚なの⁉️」

 「うん。」

 「にゃ~にゃ~、鳴いてるのに?」

 

 うん。それは青も初めて知った。


 オークは、

 『ぶもおぉぉぉ‼️』とか、百歩譲ってモンスターらしく、

 『があぁぁぁ‼️』とか、そう言う鳴き声だと思っていた。


 あんなかわいい声だとは、想像すらしなかったよ。


 子猫みたいだ。


 ……

 うん、逆にかわいくないや。


 鳴き声だけでも、イメージはあてにはならないと思い知らされた訳だが、

 『モンスターは人を襲う』、これは揺るがないだろう。


 参った。

 今すぐ逃げないといけないのに、出口の方向を完全に見失った。


 青は現実主義者だからこそ、どうするべきか迷うのだ。


 ダンジョンには、少なくとも先ほど見たオークが住んでいる。

 適当に動いて、鉢合わせすれば終わりである。


 でも、動く以外やることがない。


 ゆっくり、並んで歩く兄妹の進行方向から、またもあの声が聞こえてきた。


 ミュー、ミュー。

 キュウゥ……


 『いや、青、君も子供だよ⁉️』と言う、突っ込みはさておき。


 子供は怖い。


 夢中になると、一瞬で前提条件を忘れる。


 「コンちゃん‼️」


 ひまわりが駆け出してしまった。


 きつねに夢中で、さっき見た謎生物のオークを忘れた。


 「待て、ひま‼️落ち着いて‼️

 ここは危ない‼️

 ここは‼️」


 『ダンジョンなんだ‼️』まで、言い切れなかった。


 声を頼りに、ひまわりが行き着いた先には?


 「ミャア‼️」と可愛らしく鳴く、かわいくない物体がいた。


 ダンジョンの部屋のような場所に、1体のオーク。

 身長3メートルはありそうな、太った巨人に豚の顔がのっている。

 牙が……

 腕の太さが……

 えげつない。


 今度は完全に見つかってしまった。


 オークと目が合いゾッとしたが、それ以上に‼️


 「コンちゃん‼️」


 ひまわりが叫んでいる。


 オークの足下には、グッタリとした子ぎつねが……


 いた。


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