第4話 少年はきつねに化かされる
「あれ?」
思わず独り言になる。
『おかしなことが起きている』と、少年は思った。
青は、教室で同級生達と弁当を食べた。
「お前、相変わらず雑だなぁ。」
「うるさい、耕輔。」
「……卵焼き、食べる?」
「ありがとう、七菜。でも、大丈夫だ。ここに入ってる。」
「うわっ。唐揚げの向こうに沢庵で、その向こうに卵焼きが見える。」
「解説どうも、はな。」
その後ショートホームルーム、で、そのまま校門に向かったが……
「遅い‼️にぃ‼️」
すでにひまわりが待っていた。
「遅くないよ。ひまが早過ぎるんだ。」
「早くきつねさん、見たい‼️」
「ちゃんと、ゆっくりしっかり食べないと、大きくなれないぞ。」
そうは言っても、兄妹の両親は大きい。
父が185センチ。
母も168センチ、ある。
本当は171センチある母だか、機嫌が悪くなると大変なので、168センチと言うことにしていた。
そんな、将来はモデル体型になりそうな兄妹は、オーロラ号に2人乗りできつねの洞穴を目指していた。
1人ならもっと早いが、小さな妹を休憩させつつ走ったので、学校を出で2時間余り。
スマホの時計は、午後3時を回っていた。
「にぃ、きつねさんは?」
妹は聞くが、本当にここが、あの洞穴か?
子ぎつねを保護した洞穴は、今は160センチある、青の胸の当たりの穴だった。
しかも浅い。
奥行きは1メートルもない。
洞穴と言うより、ただのくぼ地の筈だったのに⁉️
「ねえ、にぃ?」
「うん……」
目の前の洞穴は、サイズ感がおかしかった。
青が余裕で入れる、と言うより、息子よりはるかに大きい、父が屈まず入れそうだ。
高さ2メートル以上あるよ。
奥行きも、先が見えない。
手を伸ばせば届いたはずなのに?
あれ?
これが『きつねに化かされる』ってヤツなのか?
青は混乱する。
そして頼り切っている兄の奇妙な反応に、幼い妹も異常を感じその場で固まる。
「……」
兄の制服の袖をギュッと持って。
兄妹はただ、子ぎつねのいた筈の洞穴の前で立ち尽くし……
突然響いた鳴き声に、弾かれたように動き出す。
キュウ‼キュウ‼
ミャアー‼
ミュウ、ミュウ。
猫の子のような声だった。しかも複数。
洞穴の奥から聞こえてくる。
ちなみに、きつねも『コン』とは鳴かない。
きつねが『コン』と鳴くのなら、たぬきも『ポン』と鳴きそうだ。
正解は猫の子のような声……
「コンちゃん‼」
「あっ‼待て、ひま‼」
焦ったひまわりが、とるものもとりあえず、洞穴に走りこんでしまった。
って言うか、いつの間に名前つけたんだよ?
赤井コン……赤井紺……
赤井家伝統の名付けに偶然合致。
「くそう‼」
放ってはおけない。
青はオーロラ号を引っ張ったまま……
そう。
いきなり自転車ごとは入れるくらい広がったのだ。
謎の洞穴に突っ込んでいく。
妹を追って。
自転車ごと入った偶然を、のちに感謝することになる。
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