第3話 少年老い易く学成り難し

 8時20分には、学校に着いた。


 「だいぶ慣れたな」と、呟く青だ。


 青が自転車通学を始めたのは、6年生の今頃だ。


 さすがにいい加減な彼の父母でも、

 「身長が150センチを越えたら」と、条件をつけた。

 

 山越えになるし、それくらい危ないのだ。

 いくら車が苦手とは言え。


 6年生の最初の身体測定で152センチだったから、オーロラ号との今がある。


 最初は家を6時に出て、8時半ギリギリに着いた。

 今は6時半出で8時20分。


 出発が、

 『もう少し遅くても大丈夫かな?』と思っていると、

 「にぃ‼️」と、ひまわりが駆けてくる。


 スクールバス組が、ゾクゾク到着する時間だった。


 「来たか、寝坊助‼️」と抱き上げると、

 「にぃが早過ぎるの‼️」と、怒った。


 相変わらず仲良しだなと、他の生徒達が脇を過ぎた。


 全校生徒30人以下の世界だし、全員が知り合いであり、幼馴染みの世界なのだ。


 「今日、わたし、にぃと帰る‼️」と、ひまわり。

 

 「きつねさんに会うの‼️」


 兄妹は、入学式の翌日の午後、近所の山で子ぎつねを見つけた。

 

 野性動物に簡単に手を差し伸べてはならないと分かっていたが、弱っていたし、親も見当たらない。


 「にぃ‼️」


 ひまわりは騒ぐし……


 仕方なく、偶然近くにあった洞穴……と言うには小さい、奥行き1メートルほどの穴にきつねを運び、青の着ていたTシャツと、ひまわりのマフラーで包み込んだ。


 今は学校帰りに弁当の残りを青が運ぶ、そう言う状態だったのだ。


 「わかったよ。」


 学期が始まったばかりで、小学校も中学校も、昼飯を食べたら下校する。

 オーロラ号の後ろかごに、立ち乗りさせればいいだろう。


 「じゃ、勉強頑張れよ、ひま‼️」

 「にぃも頑張れ‼️」


 青は妹と別れ、教室に向かう。


 「はよ。」

 「おう‼️」

 「おはよう、青君。」

 「おはよう。」


 1年生は全部で4人。


 発言順に、赤井青、駒方耕輔(コマガタコウスケ)、斉木はな(サイキハナ)、野間口七菜(ノマグチナナ)だ。


 中でも男子である耕輔は、青の到着を待っていた。


 「青‼️見たか⁉️ニュース⁉️」

 「ニュース?」

 「ダンジョンだよ、ダンジョン‼️」


 『ああ』と、青は思い出す。


 そう言えば、出掛けにニュースが騒いでいた。


 「お前、朝早いからなぁ。」

 「一応見たよ。なんか、東京かどこかにダンジョンが出来たって。」

 「それだけじゃないぞ‼️全国各地だ‼️いっぱい見つかって、自衛隊が出たり大騒ぎだ‼️」


 「ああ、ダンジョンかぁ。入ってみてぇ。」


 ウキウキの耕輔に、そんなものかと、青は冷めている。


 いや、ダンジョンは上がる。


 でも、一般人が入れるなんて、ずっと先の話だろ?

 

 ダンジョンって、ゲームの中みたいなモンスターが出るだろうし、しばらくは自分達の出る幕じゃない。


 青の性格は冷静と言うか、かなり現実的なのだ。


 やがて担任が来て、授業が始まる。


 朝の早い青はウトウトすることが多く、残念ながら、数学のプラスとマイナスが既に混乱していた。





 読んでいただきありがとうございます。

 異世界ファンタジー『帰るまでが遠足ですか?……出だし土下座から始まる異世界迷走……』も、夕方更新でやってます。

 よろしかったら、こちらにもどうぞ。

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