第4話
私たちの両親は、私たちが小学五年生だったときに事故に遭って死んでしまった。
幸いにも当時はまだ母方の祖父母が健在で、私たちはそこに身を寄せることができたし、突然肉親を亡くした二人の子供に親戚の人たちも良くしてくれて、お陰でこうして大学にも行って就職もできた。
今では妹と二人で自立した生活ができている。
だから、私たちは幸運だったのだろう。
「……」
それでも、私たちが二人きりであるという実感はなくならない。
大切なものは呆気なく居なくなってしまう。それがどれだけ大切な存在であっても、いや、だからこそ本当に呆気なく、何者かの気まぐれとしか思えないほどに突然。
そんな事実は私たちの心に深い傷を残した。
父も母も死んだと知ったときの、あの――これまで私のすべてを支えていた足元がなんにもなくなって、上下も左右も世界もなくなって、自分の存在までもが分からなくなったときの、妹の他にすがるものがない、そして彼女にも私しかいないという――感覚は忘れられるものではない。
お葬式の日、鈴花はずっと泣いていた。
身体の中身が全部出てしまうんじゃないか、と思うほどの彼女の
足元も上下も左右も世界もなくしてしまった私たちの、これからの二人きりの生活のことを考えると、呆然としてしまって、とても泣くことができなかったのだ。
そう、こんな風に、私たちの性質は他の人が思うほど一緒ではないのだ。
大切な人を突然奪ってしまったり、妹の書いた小説が誰かに認められたり、スズメバチが怖かったり、休日の昼間から飲むお酒がおいしかったり――いいことも悪いことも気まぐれなこの世界を、私たちは戸惑いながら、なんとかバランスを取って生き延びなくてはならないのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます