第5話 チート

「えっ? 普通は他人のは見えないんだけど……」


 うーんとバーニーが腕を組んで首を捻る。しばらくそうしていると、思いついたように手を解いてぽんと手を打った。


「ミウ。君のスキルに鑑定っていうのはないかい?」


 そう言われて、私は視線を自分のステータス画面に戻し、スキルに並んだ字を追う。


 ──それにしても色々あるな。これってチートとかいうやつ?


 首を捻りながらスキルの最後に書かれた文字を見つける。


「あった! 鑑定!」


「だからだね」


 うんうん、と納得したようにバーニーが頷く。


「そんなレアスキルを持っているなんて凄いな。さすが招かれ人。なあミウ。他にはどんなスキルがあるんだい?」


 問われたので、私は画面に並んでいるスキルを順に読み上げる。


 一つ一つ読み上げる度に、バーニーが頷く。そして、最後まで読み終えると、彼は「うーん」と唸った。


「さすが招かれ人と言うべきか……」


 うーん、うーん、と唸っている。


「……そんなに凄いの?」


 まあ、自分でもチートじゃないの? と思ったくらいである。凄そうなのは解るけれど、全部レベル1みたいだし? たいしたことがないのか、どっちなんだろう?


 そう考えながらバーニーが口を開くのを待つ。


 すると、ビシッと彼に指さされた。


「将来、超有望!」


 ──ん。なんか微妙な言い回し?


 いますぐ有望って訳ではないけど、将来的には可能性あり的みたいな?


 私は指さされたまま首を傾げる。


「まあとにかく、努力はいるけど、才能の芽はたくさんってことかな。錬金術のスキルがあったのは助かったよ」


 そう言われて、なるほどと納得すると共に、なにが助かったのだろうと再び疑問が持ち上がる。


「助かったってどういうこと?」


 そのまま疑問に思ったことをバーニーに投げかける。


 すると、バーニーがガシガシと頭をかきながら答えた。


「この近くにサクラが使っていた工房がそのまま残っているんだけど、それを継いで、そこで薬を作ってもらえるなってことだよ」


 その言葉に私は飛び上がって立ち上がり、土の付いたスカートをはたく。


「工房!」


 私は期待に胸がふくらむのを感じた。


「ねえ、もしかして、魔法でお薬を作っちゃったり出来るの!?」


 私の胸の辺りにあるバーニーの顔をかがんで覗き込むようにして、私は尋ねた。


「そうだよ。サクラの薬は一等品で、この近くの村人は頼りにしたたんだ。……でも作れるひとがいなくてね。困っているんだよ」


 そう言いながら、バーニーが私の手を握る。


「こっち」


「こっち?」


 私はこちらというように引っ張って促されながら一歩足を踏み出す。


 レシピがあるのなら、誰かが継いでいてもいいのではないだろうか? そう私は疑問に思う。


「レシピがあるなら、誰でも作れるんじゃないの?」


 だから、疑問をそのまま口に出してみた。


 すると、バーニーは渋い顔で首を横に振った。


「読めないんだよ」


「読めない?」


 そんなに文字を読み書き出来る人が少ない世界なんだろうか? あらためて疑問が浮かぶ。けれど、百聞は一見にしかず。素直に着いていってみることにした。


 そうしてバーニーに手を取られながら、細い道を歩いて行くのだった。

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