第2話 青号作戦
自己紹介が終わった後、ろくでなし分隊の面々は、くだらない訓練をした。
匍匐前進とか、そう言った奴だ。
前線でやる訓練なのかと言うのは、疑問ではあるが、そんな物なのだろう。
・・・その退屈な訓練は数週間・・・数ヶ月、覚えてはいないが、長い期間続いた。
そして数週間後、ついに命令が掛かってしまった。
この頃には、俺はこいつらが一番の仲間になって、逃げようなんて思考はなかったと思う。
まぁ、命令に従い、俺達は南方のよく分らない、河のような所で戦闘を行った。
戦車の背に隠れて、ボルトアクションのライフルを握り、中腰で進んでいったんだ。
このとき、分隊長パウルは、機関短銃を構えていた。
此処では、俺達は対して、大きな戦いに巻き込まれることは無かった。後方に居たからな。
そして、俺達は思っていた。
今後も『大きな戦いに巻き込まれることはない』と。
第一段作戦が終わった後、
「案外、余裕で戦争に勝てるかもな」
とシュミッドが突然言い、
「ハハハ、そうだったら、クリスマスには本国に帰れそうだな」
シュナイダーが便乗するように言った。
「シュナイダー。それとシュミッド伍長、ふざけてたら死にますよ」
ウェバーは調子に乗っていた二人にそう言うと、
「そうです。ウェバー君が言うように、危ないですよ。ねぇ、シューネルトさん」
メイヤーがウェバーを擁護するように、シューネルトに問いかける。
すると、
「あぁ」
シューネルトは短く返しながら、空を見渡していた。
「そんなこと無いって、きっといけるって。なぁ、ミュラー、ウェストフース分隊長」
シュナイダーが、顔を後方に、俺とウェストフースに向けると、
「な訳あるか!調子に乗らずにキチンとやれ!」
ウェストフースは、こう毅然と、注意の言葉を出した。
「ミュラーは、どう思う、この戦争は、クリスマスまでに終わると思うか」
シュミッドが俺に問いかけた。
「・・・どうでしょうね」
俺が返すと、
「お前も、ふざけるな!」
ウェストフースに言われてしまった。
「はっ、はい!」
一応、しっかりと返事をした。
まぁ、こんな具合に舐め腐ってふざけてたわけだ。
特に、シュミッドと、シュナイダーが。
その後は、この戦争で、誰が生き残るか。誰が死ぬか。
そんな、悪趣味な賭けを行った。
結果は、ウェバーが生き残り、俺が死ぬと言うのに、賭ける奴が一番多かった。
「おい、何でだよ」
まぁ、当然のことを問いかける。
すると、
「だって、お前は、何て言うのか・・何て言おうかな・・・死にそうじゃね」
心外なことを、シュミッドが言い、
「お前は、顔が薄いからそう思っちまうんだ。多分」
シュナイダーが言った。
「顔が薄いって、ただの悪口じゃ」
俺が、そう言うと、
「まぁ、良いじゃ無いか」
押し通すように言われた。
「・・・それじゃあ、どうしてウェバーが生き残ると思うんだよ」
不貞腐れながらも問いかける。
すると、
「まぁ、この顔面だし」
シュミッドが言い、
「籠絡とか出来そうじゃん」
とシュナイダーが続いて発言をした。
「おい、僕の事、馬鹿にしてるだろ」
先程まで、黙々と話を聞いていたウェバーが、怒ったように言いだした。
「いや、本当に出来そうじゃん」
シュナイダーが返事をすると、
「出来ないし!そんな事するわけがない!」
彼は更に怒ったように、こう言い、以降、発言をすることがなくなった。
「はぁ、まぁ、お前も、頑張れよ。この戦争が終わったら、全員で、酒でも飲みに行こうぜ」
シュミッドが、そう言った後に、
「勿論、分隊長のおごりでな」
賭け事には参加したが、先程まで声を発していなかった男にそう声を掛けた。
「はぁ!何で、私が払うことになるんだ!メイヤー上等兵!お前の実家は、確か太いよな。頼むぞ!」
絶対に払いたくないと言った調子で、彼はまたも、賭け事に参加し一言も発言していなかったメイヤーにそう声を掛けた。
「いやいや!流石に無理です」
まぁ、結果としては、断られてしまったわけだが。
「よし、分隊長のおごりで決定!貴方も絶対に死なないでくださいよ~。そして、絶対に酒をおごってくださいよ~」
シュナイダーが、そう話を収め、
「どっかで聞いた、シューネルト軍曹の秘蔵お酒も下さいよ~」
賭け事にも参加せず、ずっと空を向いている男に声を掛けた。
「・・・やるわけがない」
空を向いていたシューネルトは、小さく、確かにそう返事を返すのだった。
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