鏡がよろけた
呪わしい皺の色
もしこしすぐるぽ!
そっくりなおちびちゃん達と出会った。右の子が左の子の顔立ちを真似、左の子が右の子の背格好を真似ていた。
「どっちがお兄ちゃんなの」しゃがみつつ尋ねると、彼らは口を揃えて答えた「僕だよ」
私は反射的にポケットを探り、包装されたブツを取り出した。
「おじさんのほっぺにチューしてくれるのはどっちかな。早い方にはこのチョコをあげよう」鏡がよろけた。チョコは右の子に渡った。もしこしすぐるぽ! 二人の将来が楽しみだねえ。
親の愛が平等に分配されていることを示すかのように同じ服を着た彼らを見かけると、絶対に一揃いの靴下を穿かなければならないというような強迫観念じみた大人の怯えを感じる。羞恥を克服するというようなありきたりな解決法を示したくないという別種の強迫観念に取りつかれている私は、脳死の策として左右いずれかの脚を切断することを勧める。
もしこしすぐるぽ!
中学時代、私はこの謎々をテスト用紙の余白に書き込み、副担任を試したことがある。テスト返しの日、彼女は困惑と好奇心に満ちた顔で答えを訊いてきた。その表情は思春期の少年の心を悩ませるのに十分で、網膜に焼き付けるための時間稼ぎにと、私はとうとう答え合わせをし忘れた。可愛くないあなた方になら焦らさず「キツツキ!」と明かすのに。
絡まったイヤホンを解かないまま両の耳に挿し込む時、左右でコードの長さが違っても案外使えるものだ。双子の人生も同様に
こじつけで「手術費用」を節約できたのならいよいよ私もお節介を止め、一介のおじさんに戻ろう。もしこしすぐるぽ! 二つのチョコを持って。もしこしすぐるぽ! 二つの口づけを落としに。
鏡がよろけた 呪わしい皺の色 @blackriverver
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