足跡
犬時保志
樹海の亡霊
私は最近流行りの冒険者だ。
駆け出し凡百の冒険者は、往々にして奇をてらい地道な調査を嫌う。
詰まらん成果を大袈裟に語る陳腐さ、だがそう言った凡百が、一般受けするのは謎だ。
しかし私はベテラン冒険者のプライドに掛け、一般受け狙いへつらう真似は絶体しない。
ベテランの私は地道な調査を繰り返し、ここぞと言った標的に食らい付く。
不器用と笑う者が多いが、曲げる事の無い信念、此れこそ私がトップ冒険者の位置に居続けている根元と自負している。
今回の冒険標的は、人跡未踏の樹海の深部で目撃された亡霊調査だ。
ほとんど人が踏み込んだ事の無い場所が樹海だ、単独わけ入るのは少し不安ではあるが、私の身体は鍛えられて強靭、滅多な魔物に遅れは取らん!!多分……
不安を打ち消し準備万端、期待と不安が一つになり、それでも意気揚々と私は出掛けた。
無駄足は問題ない、幾度もやった手、調査名目で報告すれば性悪評論家共に失敗とは言わせない。
樹海をさ迷う事50日、食い繋いだ食料も尽きてきた。
「よし!調査修了(苦笑)」
成果が無かった残念感より、単独で孤独な探索を終らせる事が出来る安堵感の方が勝った。
安堵感から無防備に向きを変え、帰還しようとした私の前に突然亡霊があらわれた。
亡霊は「きぇー」と奇声を上げ、一瞬で欠き消えた。
一瞬の出来事だったが、ベテランの私は無意識にしっかり記録を撮っていた。
動悸が治まるのを待ち、まだ動き続けている記録を再生した。
記録を見るとのっぺり青白い不気味な身体、頭部には触角が無くボウボウ毛が生えて居る、身体は甲殻が無くぶよぶよした二足歩行の生物!!非常に醜い外見の生き物?
「新種生物の発見だ!!大発見だぁ!!!」
興奮した私は4本だけに留まらず6本の足全て使い樹海を駆け抜けた。
冷静になり、遭遇場所の位置を確認して居ない事に気付いた。
辺りに触覚を触れさせて、位置確認を行った。
亡霊の姿を求め未練がましく私は振り替えった、満月は赤く輝き、樹海の腐葉土にただ私の足跡だけが続いていた。
足跡 犬時保志 @ysxyz
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます