第1話 朝ごはんと未来の旦那様

 ※前書き

  時系列的にわからなくなりそうなので先に補足説明。

  一章最終話の翌日のエピソードです。

  二章プロローグよりも前のお話で、魚の餌よりも前です。

  そこんところよろしくお願いします。

 ―――――


 小鳥のさえずりと共に目を覚ます。

 目の前には、産まれたままの姿の愛しい女の子。

 綺麗な長い黒髪がやや乱れ、汗と少女の匂いが混ざった甘い匂いが漂ってくる。


「おはよう、あなた」


「うん、おはよう」


 どうやら久遠は目が覚めていたようだ。

 俺が起きてすぐ朝の挨拶をしてくれた。

 昨日屋上から帰った俺たちは、初めて本当の意味で結ばれた。

 その証拠に、シーツには赤いシミがついているだろう。


「幸せって、こういうことを言うのね」


「昨日までと変わらないだろ?」


「全然違うわよ、昨日までは不安でしかたなかったもの」


 昨日までの俺たちの関係はあくまでも仮。

 そう考えると、久遠はずっと不安だったのか。

 申し訳ないというかなんというか……。

 久遠のいじらしい、控えめな笑顔が胸に刺さる。

 

こんな純粋無垢な子に、俺は仮だなんて言い訳して……。


「ねえあなた、トイレ……したくない?」


「ん? あー、したいな。そろそろベッドから出ようか」


「いいえ、それには及ばないわ」


 ……及ぶが?

 久遠が起き上がり俺の股の間に来て大きく口を開く。


「さ、どうぞ」


「……はい?」


 この子、何してるん?

 

「ここにしていいのよ」


 そう言って自分の口に指をさす。

 ……前言撤回。

 間違いなく純粋無垢ではない。

 とんでもないド変態だ!


「いやいやいや! そんな趣味無いよ!」


「……飲ませるんじゃなく、飲みたい側って事?」


「そっちでもないよ……」


「そう……」

 

 久遠が心底残念そうに立ち上がる。

 綺麗な身体が隠すべきところを含めて全部見えて、とても綺麗で淫靡だ。


「やっぱり飲みたくなったの?」


「違うよ! その、あれだ……久遠の体が綺麗だから……」


「ふふっ、全部あなたの物よ? なんなら、今からしたって構わないわ」


「魅力的な提案だけど、朝からしてたら体が持たないよ」


 昨日だけで三回はしてるからな……。

 初めてであれなら今後どうなるか分かったもんじゃない。

 

「仕方ないわね……じゃあ、朝ごはん食べましょう?」


「そうだな……」


――

―――

――――


 ベッドから出た俺たちは、二人でシャワーを浴びて食卓に着いた。

 食卓にはコーンフレークと牛乳が並んでいる。

 というか、先に出た久遠が並べてくれていた。

 ……そしてなぜか久遠は俺の上に座っている。

 

いや、なんで?

 

「く、久遠さん?」


「ねえあなた、私やってみたいことがあるの

「やってみたいこと?」


「お互い口移しで食べさせあったら、食事がもっと幸せになると思わない?」


 ……思わないな。

 けどなーー。

久遠にはずっと辛い思いをさせてきたしなーーー。

 まあこれ位は付き合ってもいいか。


「やってみるか」


「本当!? ぜひやりましょっ!」


 すっごい嬉しそうだ。

 こんだけ喜んでくれるならいいか。


 久遠が嬉しそうにコーンフレークを咀嚼し、俺に跨ったまま口づけをする。

 そのまま舌が入ってきて、牛乳と唾液が混ざり合ったドロドロのコーンフレークが口の中に入って来る。

 

 ……端的に言って、あんまり幸せではないな。

 牛乳が久遠の口であたたまって生温いし、何よりコーンフレークの良さである食感が消え失せてる。

 美味しくない、うん。

 

「どう、美味しい?」


「あー、うーん。とりあえず久遠も食べてみたら?」


「ふふっ、そうね。じゃあ私にも食べさせて?」


「お、おう」


 久遠も不味さにがっかりして諦めてくれるだろ。

 流石にこれを実際に味わって本当に喜ぶほど変態じゃないはずだ。


 俺も同じようにコーンフレークを咀嚼し、久遠の口へ流し込む。

 目を合わせると、いつになくとろんとした目をしてる。

 あれ、なんか……え?


「美味しい……」


 え!?

 この生温い離乳食みたいな食べ物が美味しい!?

 ど、どうなってんだ……?


「私いま、最高に興奮してるわ……」


「お、おう」


「食欲と性欲を同時に満たせるなんて、どうして今までやってこなかったのかしら……!」


「食事中に性欲は満たされなくても良くないか?」


「いいえ、時代はタイパが求められているの! つまり、この食べ方が主流になるべきなのよ」


 タイムパフォーマンス向上のためにこんな不味い食べ方が主流になるとか、どんな地獄だよ……。

 というか、性欲も満たされてるって、興奮してるの?

これで?


「ほら、あなたも食べて?」


 また、ドロドロになったコーンフレークが口の中に入って来る。

 久遠の唾液と混ざってると考えたら確かにエロいけど、そういう問題じゃないよなこれ……。

 

 もしかして、久遠って俺が思ってたよりもずっと……。


「着替えたばかりなのに濡れてきちゃったわ……」


 想像よりも何倍も変態なのかもしれん。

 俺、ついていけるかな……?


「あなたも大きくなってるわよ?」


「いや、これは……」


 断じてこの行為で大きくなったわけじゃない。

 総合的にというかなんというか……。

 とにかく、俺は変態じゃない!!


「あなたも私と同じね」


 久遠が耳元で囁く。

 蠱惑的な声に誘惑され、何かが決壊してしまいそうだ。

 

 だけど、これからは誰に遠慮する必要もない。

 俺たちなりの幸せを掴めばそれでいいんだ。


 でもまあ、とりあえず。


「しばらくこの食べ方禁止な」


「どうして!?」


「美味しくないから」


「そ、そんな……」


 久遠の微笑ましい嘆きを見ながら、俺はコーンフレークを食べる。

 うん、やっぱり普通に食べた方が美味いな。


 ―――――


 読んでいただきありがとうございます。

 暫くはこういう久遠との他愛もない日常メインで進めて行きます。

 プロローグへはしばらくしたら繋がりますので、まあ気長にお待ちください

 あと、台詞の間にも空行を入れてみました

 不評なら元に戻します

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彼女に浮気されて絶望した俺は、学校の屋上から飛び降りる直前に出会った清楚系美少女の"未来の旦那様"になって毎晩予行演習()をシています いろはに政宗 @rushia0127

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