第二章
プロローグ 監禁と忠犬と未来の旦那様
小皿に入った犬の餌のような食べ物を、まるで犬のように手を使わずに食べる。
その様子を一台のカメラが映している。
“ペット”の動きに合わせて起動するそのカメラでとらえられた映像はきっと、あいつのスマホに転送されているんだろう。
首には首輪とリードを付けられ手は体の後ろで手錠によって縛られているから仕方ないとはいえ、余りにも屈辱的だ。
暫くすると、扉を開く音が聞こえる。
この部屋の主が帰ってきたみたいだ。
「……ただいま、ゆうと君」
大柄で威圧感のある女が、いつものように元気のない声で帰宅を告げる。
「おかえり、京香ちゃん」
「……いい子にしてた?」
「してたよ、だからこれを外してくれ」
「いいよ」
そう言って、俺の首輪を外す……残念ながら、手錠は外してもらえない。
京香ちゃんからほんのりと香る汗の匂いにすら興奮してしまう。
この部屋に監禁されてから一週間がたつ。
その間“何も”してないから、色々溜まってきてるな。
ストレスも、その他諸々も。
「……ちゃんとごはんも食べて、えらいね。軍用糧食だから、栄養たっぷり……だよ」
「それはよかったよ……」
「……いいこ、いいこ。ふふっ、かわいい」
京香ちゃんが俺の頭を愛おし気に撫でる。
かわいいけど、絶対に逆らえない状況だと少し怖い。
あー、久遠が作ってくれる暖かい料理が食べたい。
久遠は今頃何してるかなぁ。
心配してるよなぁ……。
「……トイレは、大丈夫?」
「そろそろ限界」
京香ちゃんが目の前で着替えながら聞いてくる。
プライドにかけて漏らす事はしてないが、朝から夕方までトイレに行けない生活は辛すぎる。
幸い今のところは学校が終わってすぐに帰って来るが、京香ちゃんの仕事が長引いた場合は多分部屋の中が悲惨なことになるだろう。
「じゃあ、トイレに連れて行ってあげる」
「そりゃどーも……」
トイレの時だけは手錠を片方外してもらえる。
ある意味唯一の自由だ。
「……脱がすね」
ただし、片手は壁にある手すりに繋げられるからずぼんすら自分で脱げないんだけど……。
同い年の女の子にトイレの介助されるって、すっげえ恥ずかしい。
……ちょっとエロいけど。
ていうか京香ちゃん、なんかいつもよりさらに薄着だ。
キャミソールとショートパンツだけって、もう誘ってるだろ……。
俺の股の前に座りズボンをおろしてるから、谷間が丸見えだ。
いっそ、押し倒してしまいたい。
いや押し倒す術がないし、押し倒そうとしたとしても殺されるだけなんですけどね。
「……うわぁ」
京香ちゃんがいつにもなく驚いたような声を出してる。
心なしか恥ずかしそうだ。
……あほなこと考えてたせいで俺のあれが大きくなってた。
恥ずかしい、余りにも恥ずかしい……!
「いや、これは、その……!」
「……男の子はすぐこうなるって会長も言ってたし、うん、大…丈夫」
京香ちゃんが白い肌を真っ赤にしてあれから顔をそらしてる。
いつになく早口だったし、多分本当に恥ずかしいんだろう。
意外と初心な子なんだな……。
というか、仕方ないだろ!
脱がせたのも、薄着で居るのも、そもそも一週間も監禁して“何も”させなかったのも全部京香ちゃんなわけで。
俺は悪くねぇ……!
怖いから心で悪態着くしかできないけど……。
「……このまま、お風呂も入れてあげる」
「え、このまま?」
「……うん、だからズボン、脱いだままで」
「……たったまま?」
「……それは、知らないっ」
怖いもの見たさでちょっとからかってみた。
京香ちゃんは顔を背けて個室から出て行った。
うん、可愛いな。
久遠や渚とはまた違ったかわいさがある。
監禁生活も悪くないのでは……!?
いや、悪いな、うん。
―
――
―――
――――
風呂から上がり暫くして、ベッドに入る。
再び首輪とリードを壁に繋げられ手は拘束されたままだ。
ちなみに、ベッドはダブルベッド。
俺の隣には京香ちゃんが寝てる。というか、抱き枕みたいに抱きしめられてる。
曰く、逃がさないためらしい。
拘束されてるから拒否することも出来ない。
繰り返すが、拒否はできない。
うん、だからな?
つまり、あれだ。
俺が今京香ちゃんの胸の谷間に顔を埋めてるのも逆らえないからしょうがないってわけだ。
断じて浮気じゃない。
いやーどうしようもないからな。
ていうか、胸でけぇ……。
久遠や愛衣とはちょっと比べられない位の“質量”を顔全体で感じている。
この状態で何もできないってある意味拷問だぞ。
久遠と仮の関係を結んでた一週間だって、別に禁欲生活だったわけではない。
あれとは比較にならない本当の禁欲生活は、想像より辛い。
なんか、土下座して頼めば手とかでしてくれないかな……。
……いや、駄目だ!
俺から頼んだらもう言い逃れできない浮気だ。
それは駄目、良くない。
ちなみに、京香ちゃんは朝シャワー派だそうで俺を風呂に入れつつ自分はシャワーすら浴びてない。
だからこう、汗とか色々な濃い匂いが胸の谷間から漂ってきて、それがまた俺の理性を溶かそうとしてくる。
久遠ー!早く助けに来てくれー!!
なんか、NTRヒロインになった気分だ。
はぁ、どうして俺がこんな目に合わないといけないんだ……。
ちょうど一週間前、京香ちゃんに捕まった日の事を思い出しながら心の中で深いため息をついた。
現実でやると変態的すぎるから仕方ない。
けど本当、どうしてこんな目に……。
―――――
大変お待たせ致しました。
第二章開始です。
まずはプロローグからですけど……。
プロットはあるので早いペースで投稿していけると思います。
次回からはここに至るまでの久遠や渚との日々が続きますので、そちらをご希望の方はもう一話だけ待ってください。
ではでは、また次回。
よろしければ★やコメント、フォローもよろしくお願いいたします。
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