第42話
最近はめっきり外に出なくなった夫
グランドゴルフで足を痛めてからは廃人のようになっている。
妻 ねぇ〜足も治ってるし、そろそろ始めない?またグランドゴルフに行こうよ!
夫 .....
妻 聞こえてるの!?
都合が悪くなったらいつもこう、腹が立つ……
妻 外に出ないとボケるわよ!
まだまだ若いんでしょ!
夫 ご飯まだ?
妻 えっ……!?
今食べたじゃない!
やだわ〜ボケてる?
何言ってるの〜
夫 食べたね...…食べたかな?
その時はそれほど気にはしていなかった。他愛ない夫との会話だった。
足もすっかり治ったし、腰の重い夫を引っ張り久しぶりにグランドゴルフへと出かけることにした。
外は晴天で、金木犀の香りが秋を知らせて、寒くも暑くもない風に包まれるのがとても気持ちいい。
これなら夫も気持ちよくグランドゴルフができるかな……
妻 ほらあなたの番よ頑張って!
せっかく来たのに、頑張って!
カーン
夫の打ったボールが出鱈目に動いて溝に入る。
気分を害したのか夫はクラブを置いて公園の隅のベンチに座り込んだ。
妻 どうしたの...…?
前はこんな事なかったのに。
快活な人だった。
けれど最近はいつもこう。
抜け殻みたい……どうして?
そんな夫を見て何となく嫌な予感が過ぎる。
もしかして...…まさか、まだそんなに衰えてはいないはず、
そして後日、足の完治の確認で夫と病院へ
足は完治だった.....
けれども先生に勧められ、認知外来へ行くことに。
診断結果は、アルツハイマー認知だった。
ざわり、胸の辺りが落ち着かない。
妻 どうしよう......
夫 何で私が認知なんだ!
ヤブ医者め失礼極まりない!
妻 会話はできるのに、
時々おかしいのよね。
どうしよう酷くなったら……
私達ふたりの不安と心配の日々が始まる
夫 ご飯まだ?
妻 えっ!今食べたでしょ……
だんだんと夫の行動がおかしくなってきた....
本当に分からなくなってきた。
変わらない夫
けれど変わって行く夫
変わらないはずの私達の些細な変化
良くある話だけど
想像もしなかった未来が不安でふと夫の横顔を盗み見て、
相変わらずのムカつく表示にほっとした。
大丈夫よね、私がしっかりしなきゃね
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