第41話 かぶと虫 第二章その後の 2人
もう何十回目かの冬を迎える
見慣れた横顔はすっかり年老いて
私たちは高齢夫婦になってしまった
妻 ねぇ、あれからもう何年経つかな?
ねー!あ、れ、か、ら……また聞こえてない
夫 ん?何か言ったか.....?
妻 あれから何年経つのかな!孫ができて、
私も仕事を辞めた時のこと覚えてる!?
夫 あ……そこのお茶、とってくれるか
(全く、ボケてるのかボケてるフリをしてるのか 腹が立つ……)
全く動かない夫の今の定位置、いつものコタツ
(ボーとして、顔のたるんだくそジジイめ!)
夫に内心で悪態つきながら、思い出すのは
娘に子供ができ毎日が楽しくてたまらないあの頃
娘も共働きで保育園の送り迎えが大変そうだった
だから私もそろそろ歳だしと、
思い切って仕事辞めて
孫のお世話に専念することにした
朝、娘の家に孫を迎えに行って保育園まで送る
それが私の役目になった
(お迎えは夫の仕事、何かしてもらわないとね)
けれど夫と孫はいつも中々帰って来ない
妻 遅いなぁ……帰りにまた寄り道してるね
(夫が迎えに行くと帰りが遅いのよね、全く)
夫 ただいまー!帰ったよ!
ママが帰ってくるまでじぃじと遊ぼうね〜
妻 また、そんなにお菓子買ってきて!
娘にいつも言われてるでしょ?
ご飯食べないからお菓子は辞めてって!
本当に、甘いんだから!
(いくら可愛いからって買いすぎなのよね
何がじぃじだ!くそジジーだわ!)
夫 ばぁば、怖いね〜、ほらこっちに逃げよう
(孫に買って何が悪いんだ、クソババアが)
毎日孫とお迎えの帰りにお菓子を沢山買ってくる
娘もかなり怒っているが、
送り迎えがで仕事でできなく文句もあまり言えないようだった
(あたしが代わりに言わなきゃね!)
妻 ご飯まで一個しか食べたらだめ!
ママに怒られるよばぁばが預かるから
お菓子をよこしなさい〜?
孫 嫌!じぃじが良いって言ってるもん!
ばぁば嫌い!あっち行って!
(いつも私が嫌われ役だわ……)
娘 ただいま、ありがとう!
帰るよおチビちゃん〜
孫 やだやだ〜!!じぃじと遊ぶ!!
夫 そうかそうか、じぃじと寝ようか。泊まるか
妻 だめよ、帰らないとママが泣くよ?
妻 何が泊まるかだ、毎日毎日同じことを言って
最後まで面倒見ないくせに!
娘 だめ!早く帰るよ、来なさい!
いつもこうなる、夕方の慌ただしい時間
泣きじゃくる孫と、苦笑いする夫
大変だったけど孫は可愛いかったなぁ……
妻 はいお茶どうぞ。いつもお菓子たくさん
買って娘に怒られていたのを覚えてる?
夫 そんな事あったかなぁー?
妻 都合の悪いことは忘れるのね
勝手認知が腹立つわ
妻 来年の春、小学生よ。
あっ!ランドセル買いに行かないと!
夫 そうだなぁ……
煮え切らない夫を連れて少し先の百貨店へ……
バスに揺られていく二人
久方ぶりに見るランドセルは沢山種類があって、結局決まらず、娘にネットで選んでもらうことにした
妻 いつもこう、昔から変わらないわね
けれど、そんな夫が憎めない。
今となってはこの日常が大切な普通なのだ
(私達も歳を取ったね)
先が思いやられる日
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