あとがき

 歩実さんは知らなかったんですね。


 自分には無関係な話だと思っていた。

 赤の他人の身に起きた事件。

 だから、自分が巻き込まれることなんてない、と。

 あくまでも自分は画面の外から眺める傍観者であり、当事者にはなり得ない存在だと。


 でもね。

 そんなルールは、それこそ関係ありません。


 この世界を生きる者に、死者の世界のルールを知り得る術はないのです。  

 自分は大丈夫。私は違う。私だけは……なんて。

 本当にそうでしょうか?


 そうです。今この瞬間、これをご覧になっている貴方にとっても、決して他人事なんかではありません。

 ほら、人は皆、都合良く自分を脚色しちゃうでしょ。

 自分が物語の主人公であると錯覚する。

 ホラー映画を観ていれば、最後まで生き残る主人公に対し、自分の姿を重ねてしまうのかもしれませんが、違いますよ。

 貴方だって、序盤に殺されてしまう可能性があるんです。


 よろしいですか?


 本当の恐怖は、貴方のすぐ傍に存在する。

 その入口に今日、貴方は立ってしまったのです。



 ああ、そういえば……。

 僕があの動画をアップしなければ、歩実さんの歯車はまた、変わっていたのかもしれませんね。


 歩実さんの無事を、心より祈っております。


 

 黒田十羽           

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或る日常の終焉を告げる駅 黒田十羽 @towa-kuroda

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