第6話

 結婚式から半年が過ぎた8月に彼女は日本にやってきた。

 暑い日の夕方、近くのショッピングセンターで信夫とレミーに会った。大柄な彼女は鮮やかな花柄のムームーを着て顔は真っ白い化粧に真っ赤な口紅を塗っていた。体格のいい信夫もオレンジ色のアロハに花柄のショートパンツを穿き目立っていた。私は信夫に、とにかく一緒に住めてよかったと言いその場を離れた。

 1ヵ月経った頃、私は信夫を訪ねてみた。彼は少し酔った目つきをしていた。

レミーは1週間くらい家にいて何処かへ行ってしまったというのだ。それきりと、自嘲気味に笑った。私はそんなのだめだよ彼女を戒めなきゃといい、彼にハッパをかけた。人のいい信夫は困った顔をしながら軽く頷いた。

 最近、信夫は酒の量が半端じゃない。度々大きな声をだし近所迷惑にもなっていた。彼の妹も心配をして時々訪ねていた。結局信夫は今の会社も辞めてしまって家でぶらぶらしていた。手持ち無沙汰で昼間から酒を飲むようになっていた。レミーと言えば相変わらずお金の無心の時だけ帰ってきて、2~3日でどこかへ消えてしまう、いくらお人よしの信夫でも納得がいかなくなり離婚の話を切り出そうとしていた。しかしレミーの甘い言葉に惑わされてついつい彼女のペースになっていた。それから相変わらずの生活を1年も続けていたある日レミーが乳飲み子を抱えて帰ってきた、信夫の子ができたという、信夫は驚きで頭が真っ白になり、兄に相談をした。どう考えても心当たりがないという、兄はレミーに言った。DNA検査をしてほしいと、レミーはよく理解できなくとも兄の指示に従った。

 数か月後に結果はでた。やはり信夫の子ではなかった。

 信夫は今度という今度は我慢ができなくなり離婚の訴訟をおこした。レミーは事の重大さをあまり理解していなくて裁判はなかなか進まないでいた。レミーは相変わらずマイペースの生活を続けていた。同じように時々どこかに出かけては1週間くらい帰ってこない生活を繰り返していた。そんな折、信夫は酒浸りの生活のなかでとうとう脳梗塞になってしまった、1人で飲んでいたので誰にも看取られることなく亡くなってしまったのだ。3日後に偶然訪ねてきた妹が発見した。

 その後私が危惧していたことが起こった。レミーの代理人だという弁護士が現れた。まだ信夫の妻であるレミーは相続権を主張してきた。通帳はゼロになってしまい残された不動産を要求してきた。

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悲しき日本男子 小深純平 @estate4086

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