第5話

 信夫は1人でフィリピンパブに通うようになった。そのころ、店の女の子でレミーという子に夢中になっていた。彼は相続した財産があるせいかお金の話でいつも大ぼらを吹いていた。レミーも信夫の話に夢中になり、ターゲットを信夫に絞り精一杯媚びていた。信夫は今まで女性に言い寄られた経験など1度もなかったので大いに舞い上がっていた。

 私は信夫がフィリピンパブに通っていることを噂に聞いていたので、彼にひとことアドバイスをしたいとおもい電話をした。数日間電話をしたがつながらない。あきらめ気味にも1週間後、電話をしたらようやくフィリピンにつながった。

 少しろれつの回らない声でいま結婚パーティーをやっているという、1週間も続けていて、しかも婚姻届けも日本大使館に出したという。私は最早遅かったかとため息をついた。私のアドバイスは相続についてだった。信夫の家は資産家なのでよく相続の事も考えた方がよいということだった。相続の整理がまだ済んでない状態で彼に新たな家族が増えると相続が複雑になるかもしれないという話をしようと思った矢先だった。肝心の信夫は全く無頓着で彼の兄弟を悩ますのは自明の理であろうと思った。

 1週間後信夫は1人で帰ってきた。レミーは疲れたからまだフィリピンにいたいということだった。私は信夫に婚姻届けの事やお金をいくら使ったことなどを問いてみた。やはり婚姻届けは出したらしくお金のほうはいくら使ったか覚えてないなどと浮かれたことを言っていた。後で通帳を確認すると500万ほどが減っていたという、彼の記憶をたどるとパーティー費用と彼女の父親への結納金だったらしい。

 それから半年近くたってもレミーは信夫のところにやって来なかった、電話だけは毎週あって、お金送れと愛してるの連発らしい。

 私は信夫にこの結婚に不自然さを感じないかと問うてみても、彼は、レミーが妊娠したと言っているのでお金がかかるとか、飛行機に乗ると流産してしまうとか、言い訳じみた事をいっているのを信じていた。私は友人に入管手続きを専門にやっている行政書士がいた。彼は詳しい調査はできないが彼女の現況くらいはわかると返事をよこした。結果、レミーは通常の生活を両親と過ごし妊娠の噂はないということだった。私は信夫にこの事実を知らせて、行政書士を介し、レミーに日本に来るように、手続きをとってもらった方がいいと勧めた。

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