第4話
♪~
何処からか、サックスの音が聴こえてくる。私は導かれるままに、音源を探す。
そこは朽ち果てた温室であった。温室の中に入ると紳士がサックスを吹いている。
「これはお客様ですか、歓迎するよ」
「あなたは……理事長……」
「おやおや、知っていたのですか」
「はい、理事長」
「では、わたくしが『校内楽園化計画』の首謀者であることもかね」
「まさか、理事長が犯人?」
理事長は静かに頷くとサックスを吹く。
♪~
一曲、吹き終わると、私は理事長に『校内楽園化計画』について尋ねる。
「もう少しで『楽園』が完成するのだ、客人にはその瞬間を見てもらいたいのだ」
「私が第二新聞部の部長だと知っての招き入れか?」
「あぁ、後、一人で『楽園』が完成するのだ」
私は将斗の事が心配になる。あんな人間失格が『楽園』に必要なはずがない。
「ここに粛清するボタンがある。このボタンを押せば『楽園』の完成だ」
理事長は携帯端末を見せると静かにボタンを押す。いや、まだ、間に合う、私が携帯端末に手を伸ばすと。理事長は素早くかわす。
「エンドだ」
押されたボタンは赤く点滅して『校内楽園化計画』が完了の文字が出る。すると、理事長は苦しみ出して倒れ込む。
「なに?」
「最後の一人はわたくしでね。これで『楽園』の完成だ」
「ホント、何故だ?自分を粛清しただと!?」
「そうだ、わたくしは、この学園には必要ないのだ。そして、死んだ娘の所に行ける」
「娘?」
「そう、娘だ、娘は自殺してしまった、その姿は耐え難い姿であった、娘を死に追いやった、この世界への復讐は果たせた。だから最後の一人であるわたくしが死ぬのだ」
噂で聞いた事がある。イジメで自殺した生徒が理事長の娘だと言う理由だけで、もみ消されて、イジメた、犯人が曖昧になったとのこと。
あの噂は本当であったのか。
私はレスキューを呼ぶとその場を後にする事にした。それは理事長が助からないのを承知での行動であった。その後、第二新聞部の部室に向かうと缶コーヒーを一本飲む。
「ふ~う」
大きくため息をつき、今日の出来事を考える。
「部長、どうしたのですか?」
将斗が声をかけてくる。
『校内楽園化計画』の首謀者が理事長であることを言うべきなのか?
「なあ、理事長の娘がイジメられて自殺した噂は知っているか?」
「はい、携帯端末を使って学園内の複数の人物にイジメられたとか。しかし、特定の集団では無く、校内の個別のネットワークの為にイジメた人物が特定できなかったとか」
それで『校内楽園化計画』でイジメた犯人を粛清したのか。
……。
これでは誰も救われない。
校内楽園化計画の首謀者である、理事長は死んでしまった。
『お父さんを責めないないで』
何処からか声が聞こえる。
『自殺した私が悪いの』
これは幽霊!?この第二新聞部の部室は写真部の暗室である。そう、出ると有名な部屋である。
「理事長の娘か?」
『はい』
私と幽霊との会話は印象に残るモノであった。
「悲しい結末だが、君と話せて良かった」
『はい、ありがとうございます』
幽霊は静かに消えて行く。
「よし、今週の新聞は健康的な食事にしょう」
「了解しました、部長」
「早速、取材だ」
私達は外に向かうのであった。
校内楽園化計画 霜花 桔梗 @myosotis2
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