第3話
私は銀杏の木の下にあるベンチに座っていた。薄緑色の葉が印象的であった。この世界に私は必要ない。校内楽園化計画ことニューラルネットワークの最適化に私は含まれていないのか?ニューロン細胞が死ぬ様にパツっと一瞬で死にたい。そんな事を思いながら空を見ていると。
「部長、こんな所で油を売ってないで今週の新聞の記事を書いて下さい」
将斗がやって来て、横に座ると不機嫌そうに言う。私は面倒臭くなり、適当に答える事にした。
「あ、飽きた」
「はぁ?」
私の『飽きた』との言葉に将斗は喉の奥から呆れた様な息が出る。第二新聞部の記事は掲示板に貼るだけの簡単なモノである。そう、誰も観ないのであった。ジャーナリストになる夢はここで終わるのか?私は重い腰を上げて部室に戻る。
今週の記事は簡単なお弁当の作り方にしよう。
あああああ、私は逆境に弱いな。
校内楽園化計画の記事は何も浮かばない。渋々、お弁当の記事を考えるのであった。
私は今週の記事を書いている。
「えーと、お弁当、お弁当……」
私は図書室にあった、お弁当の作り方の載った本を参考にして記事にするのだ。
「そう言えば、部長は何で『校内楽園化計画』のアプリを持っていないのですか?」
はい????
「これです」
将斗は携帯端末を私に見せる。全校生徒、教員、学校事務の方々の顔写真である。それは学園に所属する全ての人の簡単な説明の画面であった。
「あ、部長は『校内楽園化計画』の事を知りませんでしたね」
私は言われるままに『校内楽園化計画』のアプリをダウンロードする。
「これはどうやって使うのだ?」
「簡単です、死ねばいい奴に投票するだけです」
「試しに、私に投票してくれないか?」
「いいですよ」
……。
何も起きない。
「本当に投票したのか?」
「はい」
何故こんなモノが流行っているのか?
「理由は簡単、この平等な雰囲気の社会です、悪口ですら言いにくいのです。だから、このアプリで本音を示すのです」
「そして、現実世界で死人が出ていると」
「ま、このアプリがどの程度、関係しているかは謎ですけど……」
一瞬の間の後でお弁当の作り方の記事を書いている途中であった事を思い出す。
「とにかく、今は忙しい。話かけないでくれ」
「は~い」
将斗はポリポリと頭をかきながら部室を出て行くのであった。
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