第6話
「長に話をしてくるからここで待っててほしいの!」
着いて早々にエラはそう告げるとこの里で一番大きな建物に向けて飛んでいった。
俺は里の様子を伺いながらエラの帰りを待っていた。モンスターの侵攻がかなり進んでいるのか誰もかれも慌ただしく飛び回っていた。
しばらく待っているとエラが戻ってきた。
「許可をもらってきたの!」
エラと共に長の元へと向かった。
長の家と思わしき建物だけは俺でも通ることが出来る大きさの入り口をしていた。
「失礼するの」
建物に入り、とある部屋の前でエラが勢いよく扉を開いた。
扉の先には気品あふれる姿の女性が待っているようだった。
「初めまして。異界の勇者様。私の名はヘレナと申します」
「初めまして。リクです」
互いに紹介を終える。
その姿、姿勢、話し方どれをとってもアンネローゼとは比べ物にならないほど洗練されているものを感じた。
「エラからリク様の事情は聞かせていただきました。私たちの問題に巻き込んでしまうこと非常に申し訳ありません。ですが、どうか助けていただけないでしょうか」
ヘレナは深く頭を下げる。
「俺にも打算があってのことなので気にしないでください」
「ありがとうございます」
俺が本音を伝えるとヘレナは口に手を当て上品に微笑んだ。
「エラから聞いたモンスターの特徴が確かなら今の俺の実力では倒すことができないと思います」
俺の予想が確かならその存在はノースイントファントムと呼ばれているモンスターだろう。
奴は魔力体と呼ばれる魔力だけで構成された身体をしており、ありとあらゆる物質の生気、魔力を吸い尽くし成長していく厄介なモンスターである。
奴を倒すためには魔法を使うか剣気をまとわせた攻撃しか通用しない。
その反面、防御力はそこまで高くはないが、剣士の天敵と言っても良い相手だった。
攻撃を当てさえできれば倒せる自信はあった。実力だけであれば問題はない。
しかし、剣神になったとはいえまだ駆け出しの俺には攻撃手段が存在しなかった。
「そ、そんな」
俺の説明を受けたヘレナとエラの表情が絶望に染まる。
ただ、手段がないわけではないかった。
「魔法を纏った武器か特殊な武器はさえあれば倒すことができると思います。心当たりはないですか?」
俺の世界の種類で言えば魔剣、魔導剣など剣自体が魔力を持っている特殊な物もある。
この世界にもそういった種類の武器さえあれば奴を倒せるはずだ。
「私たちは武器を作るのが得意ではないのです。ドワーフならば作れるのでしょうが閉鎖的なこの国ではそのような剣を持ち合わせてはいないのです」
重い雰囲気が場を支配する。
エラが何かを思いついたようだった。
「妖精剣なら倒せると思うの!」
「それは……」
エラは良い案を思いついたとばかりにドヤ顔をしていた。しかしヘレナの表情は優れなかった。
「妖精剣はおとぎ話の存在。何処に封印されているか分かりません」
ヘレナは何のことか分かっていない俺に対して妖精族に伝わる伝説を説明してくれた。
「神々が多種多様な武具を使い世界を創造したと言われています。ここにはその一端を担った剣が封印されてると伝えられているのです」
俺はその話に既視感を感じた。
記憶を探りその既視感を思い出そうとする。
そうだ!ダンジョン史に似たような記述があったはずだ。
ダンジョンから産出される謎の石板や本。その中身を人類はそれを読み解こうと躍起になっていた。
読み解けた一部を授業で習った。その中に似たような一文があったはずなのだ。
元の世界との共通点を見つけたが、その事は今必要なことではない
俺は気持ちを切り替えることにした。
「一度そのモンスターと対峙してみます。本当に俺の知っている奴か分かりませんし、情報を集めたいです」
ノースイントファントムでなければ倒せるかも知れない。一部の望みにかけ俺は行動に移すことにした。
しかしヘレナは俺の発言を受け首を横に張った。
「分かりました。ですが、夜が近づいております。今日はお休みになられてください」
「分かりました」
「エラ、お部屋まで案内してあげてください」
「分かったの」
ヘレナの言うことも一部あった。ゴースト系のモンスターは夜になればなるほど力を増して行くのだ。
気が急いていたのかもしれない。そう思った俺は大人しくその提案に従うことにした。
ステータスが弱すぎて追放された件〜俺だけ2つあるステータスで異世界を満喫します sit @starry1113
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