小説の檻

あーる

小説の檻

同じ朝、同じ部屋、同じ服、同じ道、同じ目的地、同じ会話、同じ景色、同じ眠り。

何もかも変わらない まるで小説の檻に閉じ込められたみたいな毎日

この檻の鍵はどこにあるのかな


同じ帰り道でいつもなら気に留めない草むら

今日はなぜか足が向かった

草むらに座って顔を上げる

同じ景色が広がってた

何かの予感は間違いだったのかもしれない


気が抜けて草むらに背中をあずける

そこには知らない空があった

空を見たのはいつぶりだろう

きっと同じ空なんだ

でも久々すぎた空は私の記憶にはなかった


今日の自分を振り返る

朝起きて 着たくない制服を着て 行きたくない会社に行って そのまま家に帰るはずだったのに

何かの予感がして草むらに足を伸ばしてしまった


草むらに寝転がったから制服が汚れる

この制服は囚人服みたいだ

小説の檻に囚われた囚人


小説の物語に期待もしない、結末を知りたくもない

期待するほどの物語でも、美しい結末でもないだろう

目的も希望のない未来だから


しばらく空を見ていて思った

今日の空を流れる雲は同じなのだろうか

同じだとを持ってた毎日はもしかしたら少しずつ違うのかもしれない

この空を流れる雲みたいに


小説の文字は同じかもしれない

でも文字から感じることも、思い描くことも自分次第で変えられる

同じ小説を読んでも感想が違うように


この檻に鍵はなかったのかもしれない

この檻の扉に手を触れる

そのまま手を外の世界に押す


その世界は忘れられない物語になる予感がする


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小説の檻 あーる @RRR_666

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