初めまして。
この度は『批評企画』にご参加いただきありがとうございました。主催者の島流しにされた男爵イモです。
冒頭一万字ほど拝読しましたが、公募用に執筆したものを下地にされているようで、完成度は折り紙付きといったところでしょうか。物語の起としての掴みや伏線などが一万字の中に盛り込まれており、意欲的に読み進めることができました。情景描写や、探偵ならではの行動も表現として充実していたと思います。また、主人公の性格は好きでした。どこか不真面目で毒があり、皮肉屋のような雰囲気がいいアクセントになっていたように感じました。
個人的には面白い作品だと思いますが、客観的な視点でみた場合は気になる点が二つほどあります。まず一つはプロローグの存在について。これは存在意義が薄いように見受けられました。主人公の過去や内面を読者に伝える意図がある一方で、必要かと問われれば答えは微妙なところです。純文学のような魅力を秘めている反面、開始早々に足踏みをさせられていると感じる読者も一定数いるのではと思います。プロローグを省く、ないしは中身に主人公の仕事の流儀などを盛り込んで明確な人物像をアピールすると効果的かもしれません。
二つ目は描写の丁寧さです。
作中に登場する会社の特殊な業務内容、街並みなどを説明するうえで描写が過多になるのは仕方ないと思いますが、もう少し軽量化を図ってもいいのではと。丁寧な描写が作者様の強みとなっているのは事実ですが、人によっては胃もたれ気味に感じてしまう可能性があります。内容以前に、設定の把握で疲れてしまう。雰囲気に囚われすぎて、肝心の内容を読み落としてしまうなどということにつながりかねません。ときには主人公の不真面目さを利用して依頼主などの会話内容を少し端折り、要点を掻い摘んで読者に提示するのも一つの手だと思います。
それでは以上になります。
結構、自分好みの作品だったので、また立ち寄らせてもらいます。
作者からの返信
早速にコメントありがとうございます。励みになります。
ご指摘の件、プロローグについてはおっしゃる通りで、削除でもいいかなとも思ったのですが、探偵の今現在の夏が、過去の思い出と比べてどれだけ損なわれていくのか、というのをエピローグ踏まえて書きたかった、というのがありました。
また描写については、どうしても自分には描写至上主義みたいなところがあって、まだ足りないのではと思ったりしていたので、描写過多と感じる人も居られるというのは新鮮な驚きでした。勉強になりました。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
21世紀の東京にフィリップマーロウのような探偵が現れたら、という風景が目に浮かびました。世相とその空気の中で生きる人間の息遣いが感じられます。
作者からの返信
コメントありがとうございます。マーロウの足元にも及びませんが、何とかやっています!