第6話 新しい家族と生活
あれから数日後、私はこちらの世界の生活にも慣れてきていた。
今はエラさんの養子になるという提案にどう返事をしようか迷っている。
エラさんもローザくんも、カミールさんをはじめとした使用人の皆さんも優しい。
でも…実の家族とうまくいかなかった私が、家族としてあの人達と暮らしていけるだろうか。
それに、普通の家庭と違ってフォーレスト家は王族だ。それ相応の振る舞いをしなければならない。
「…ぁ…様……美愛様!」
「!!」
「大丈夫ですか? 先程から何か考え事でも…?」
「あっ…うん、平気よ。…大丈夫。」
カミールさんはじっと私を見つめる。
「よろしければ、私が相談に乗りますよ。」
「えっ」
「悩んでいるんでしょう? フォーレスト家の一員になるかどうかを。」
バレてる…。
「はい…。私…うまくやっていけるかどうか、分からなくて…血の繋がった実の家族とすら、うまくいかなかったのに。」
「…本当は、エラさんとローザくんと家族になりたい。だけど、エラさんの娘さんのリリーさんを差し置いて、人間の私があの二人の家族になるなんて…。」
リリーさんの名前はローザくんから聞いた。彼女はローザくんの双子の妹。彼にとって何よりも大事な片割れだろう。
「…美愛様、チェンジリングという習慣は妖精の王族にとって、仕方のないことです。女王様も、ローザ様も、リリー様もそれを受け入れています。離れ離れになっても、あの三人の家族の絆は切れません。」
「それから…基本的に、妖精は人間と仲良くなりたいとは思っていますが…元々、警戒心は高いんです。ですが、貴方様は異世界から勝手に連れてこられた被害者であるというのに、誠実だった。だから私達妖精も心を許すことが出来た。」
カミールさんは優しい眼差しで、こちらを見る。
「貴方様は、優しいお方です。私達が保証します。__そうでしょう? 女王様、ローザ様。」
後ろから、がばっと私の体が何かに包み込まる。
「えっ!?」
「美愛ちゃーん!」
「……。」
私は今、エラさんとローザくんに抱きしめられている。こ、これは…。
「あなたのこと、大好きよ。ずっと愛してるわ!」
「僕も…お姉様って呼んでも良いですか?」
「ふ、二人共…今の話、聞いてたんですか…!?」
二人は私を抱きしめるのを止めるが、真っ直ぐに私と向き合った。
「美愛ちゃん…リリーのことで、あなたが後ろめたく思わなくていいわ。それに今すぐには無理でも、これからゆっくり家族になっていけばいいの。」
「リリーは僕達に言ったんです。『私と取り替えられた人間を、家族として愛してあげて』と。」
「……ッ…。」
私をこんなに想ってくれることを知り、涙が出できた。
「…私はっ…二人の家族になっても、良いんですか…?」
「「もちろん!!」」
私の家族は妖精です。
何よりも、大切な。
異世界チェンジリング 蒼月龍華 @ringo16322
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