第5話 女王の息子と魔法


「ねえ、君が異世界人? それに僕、人間って初めて見たけど、妖精とそんなに変わらないんだね。」


おはようございます、皆さん。私の前には今、幼い美少年がいます。

ちなみに、この世界へ来てから一日経ちました。部屋に案内されたあの後、食事と入浴以外は自由時間だったので、ずっと部屋にいました。


「あっ、僕の名前はローザ・フォーレストっていうんだ。よろしくね。」


「美愛です。…こちらこそ。」


朝起きて支度をしてから、カミールさんに昨日と同じ客室に連れてこられた。

そして、この美少年ことローザくんはエラさんの息子さんで、妖精の国の王子ということになる。


「美愛ちゃんのことも、君の世界のことも知りたいな。教えてくれる? 僕もこの世界の知ってることを教えるからさ。」


私が頷くと、ローザくんは嬉しそうにほほ笑んだ。



__




それから、お互いに疑問に思ったことを質問し合った。


「え!? 美愛ちゃんの世界の人って、魔法使えないの? それに妖精もいないなんて…。」


「少なくとも、私達にとって妖精は空想の生き物だし、魔法も使えないよ。」


「…じゃあ、美愛ちゃんは僕達妖精を見てどう思った?」


「うーん、人間とそんなに変わらないなって思ったよ。でも、寿命は違うんだよね?」


「うん! 人間の寿命は百年くらいだけど、妖精は五百年以上は生きられるよ。それと不老だからある程度、大人の身体に成長したら老いたりせず、そのままの姿なんだ。」





「ローザくんはどんな魔法を使えるの?」


「僕が習ったのは、植物を成長させる魔法や、物を操る魔法とかかな。」


そう言って、ローザくんは部屋に飾ってあった花瓶を動かしてみせた。


「す、凄い!」


「…そういえば、この世界に来たなら美愛ちゃんも魔法が使えるんじゃない?」


「えっ、私が?」


「手、出してみて。」


言われたとおりに手をローザくんの方へ出すと、彼は手を握ってきた。


「…これが魔力。どう? 分かる?」


握った手が淡く光る。暖かい。ローザくんの言葉に私は頷いた。


「うん…美愛ちゃんにもやっぱり魔力が宿っているよ。」


自分も段々、魔力の流れが分かってきた。


「コツを掴むのが早いね。」


「そう?」


「なら、次はこう唱えてみて。」


ローザくんに魔法の詠唱を教えてもらった。


「『“フライト”』」


私の身体がふわふわと宙に浮く。


「本当に出来た…! 私、飛んでる!」


「妖精は羽があるからあんまり空を飛ぶ魔法は使わないんだけどね。」



すると突然、部屋の扉からノック音が聞こえる。


「ローザ、お母様よー! 美愛ちゃんと仲良くなった…って、美愛ちゃん!?」


飛んでる私に驚くエラさんを見て、私達は小さく笑い合った。

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