第4話 お世話係と女王の娘


エラさんと話し終えると、カミールさんにお城の中を案内される。


「こちらが、美愛様のお部屋です。」


「うわぁ…!」


さっきから思っていたけど、やっぱりどこもかしこも凄く豪華で広い。


案内された自分の部屋を見て感動していると、カミールさんは改めて自己紹介をしてきた。


「女王様のご命令で、貴方様のお世話係となりました。カミールと申します。」


「よ、よろしくお願いします。美愛です。」


次に部屋の中の説明をされる。用事がある時は、備え付けのベルを鳴らせばいいらしい。


「__次のお食事の時間までお寛ぎください。それでは、失礼いたします。」




__



カミールさんが部屋から出て行き、扉が閉まる。

私は大きなベッドへ腰を下ろした。


「はぁ……。」


この短時間でいろんなことが起こりすぎている。


「…異世界……妖精……王族の、養子…。」


言葉にしてみても、現実味がない。やはり夢を見ているのかと思ったが、フカフカのベッドの感触がそれを否定している。


家族との関係は稀薄で、学校でも特別親しい友人がいるわけでもない。元の世界への未練は思い浮かばなかった。

元の世界に戻ることはできないと知り、妖精という未知な存在に不安はあるけれども、どこかワクワクしている自分がいる。



「何で…自分だったんだろう。」


私が選ばれたのは偶然だと、エラさんは言っていた。


それと、あの泉から異世界へ転移したんだろう。元の世界にも、この世界にも泉があった。


「確か、音が聞こえた後に泉が光り出して、それで…泉へ吸い込まれたんだ。」


そういえば、この世界に来る前に…泉の水面を覗いたら、自分じゃない誰かが映っていた気がした。ほんの一瞬だったから、よく見えなかったけど。

あれは…


「エラさんの、娘?」


私と取り替えられた妖精。彼女は私がいた世界で生きていけるのだろうか?

常識も、何もかもが違う世界で。

…自分にとって、あの世界は生きにくかった。


「チェンジリングの習慣、か…。」


大好きな家族だとしても、離れなければいけない習慣。彼女は、いったいどんな気持ちだったんだろうか。


私は…話をしたこともない彼女の無事を願った。

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