第2話 男達、乱世に降りる
『くっ...ああ。』
《客、改め徳川家子孫"徳川 陽一"》
『大丈夫ですか?陽ちゃん。』
《男、改め石田家子孫"石田 竹隠"》
竹隠は心配した顔でその細い手を差し伸べる。
『ありがと....なっ!チク!ちょっと衝撃で転んだだけだ。』
陽一はその大きな手で差し伸べられた手に応えると流れるような動きで立ち上がった。そのため、竹隠にはまったく負担はかからなかった。
『それよりも、いよいよだな...今日ついに戦国最強が決まるのか...』
『はい...!この戦国最強決定トーナメント名付けて群雄割拠がねぇ!!!』
そう。陽一の言う通り竹隠の研究とは戦国武将達を長年の研究結果から、当時の姿そのまま竹隠の仮想世界へと出現させ、最強を決めようという...そんな子供じみた、だが日の本の国に生きるもの達全員の夢を実現させようというものだったのである。そしてかの有名な関ヶ原の戦いから丁度千年である今、実現に成功したのである。
『ふふふふふ...武将達の戦う姿を見ることができるなんて...血が途切れ、家能のわからない方々はとても苦労しましたよ...』
『ああ...大変だったな...』
(家能...それは武家ごとに宿った異能力。武家ごとといっても、宿り方は人によって違う。より武芸に優れたものがより強力な力を発揮できるという。だから俺達の家能なんてあってないようなもんなんだよな...いや、うちのは元々...)
『陽ちゃん?また考え事ですか...?もうすぐ開会なんですから後にしてくれませんか?』
『あ、ああすまんすまん。だがどうやって血の途切れた奴らの家能がわかったんだ?』
『物事には全て原因があるのですよ。そしてそれは大なり小なり未来にヒントを残します。古文書や伝記、遺物なんかは狙い目ですね。そして原因が3つわかれば後はもううちの家能でね。』
《石田家=家能 "三因叡智"》
森羅万象の物事において、その原因の内三つがわかればその全てを瞬時に理解することができる。
『そうだったな...お前の家能こうゆう面では最強のクソチートだったわ...。』
『もっと褒め称えてくれてもよいのですよ?私の家能をねぇ?』
『はいはい。すごいすごい。』
男達がそんな他愛もない話をしてると...
ゴーーーン。ゴーーーン。という鐘の音が聞こえて来た。
『この音は...』
『どうやら群雄割拠が始まるようですね。私達も行きましょう。』
そうして男達は目の前の建造物へと足を踏み入れた。中はローマ帝国のコロッセオのような風貌である。二人はそんな廊下を会場方向へと歩き出した。
『そういえば...司会は誰にしたんだ?前悩んでるって言ってたろ。タイマンなら絶対必要だろ。』
そう!これから始まる戦いは武将達による自分達の武力の押し付け合い...一対一の真剣勝負..."タイマン"である。
『それなら決まった...というか立候補がいましてね...本当はちゃんと決めようとしてたのですがいつの間にか丸め込まれていましてね...やはりあの方は人たらしの天才ですよ。』
『人たらしの天才...ということはあいつか!!!』
数いる武将の中でも織田信長と徳川家康に並びトップクラスに知られているであろう人物。そいつの名は...
『みなさーーーん!!!元気ですか!?』
廊下に備え付けられたスピーカーから甲高いがなぜか安心感を感じてしまうような声が聞こえてくる。
『陽ちゃん!急ぎましょう!主催者である私達が遅れるなど言語道断です!』
竹隠がそう叫ぶと、二人は会場方向へ走り出した。残ったスピーカーからは司会の紹介の音声が流れてくる。
『今回、この群雄割拠の司会をさせてもらうのはぁぁぁ?みんなの猿こと!豊臣秀吉でぇす!!!』
《群雄割拠司会 天下人 豊臣秀吉》
群雄割拠ー戦国最強決定トーナメントー kuro餅 @kuromochi0096
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