焦燥

その後も落ち込んだ心情とは不釣り合いな更新音を慣らしながら、つぶやきを読み込んでいく。

徐々に暗いものが目立ち始めた。…ちょうどあの頃だ。


最初は「死にたい」「●●をされた」「辛い」「なんで私って…」

そういった自分を責める内容や嘆き、苦しみを吐露するような投稿が多かったが、次第に攻撃の矛先が外へ向き始める。


「死ね」

「殺してやる」

「殺す」

「殺したい」


一緒に画像も流れてきた。

よほど深く切り込んだのか、切り口から小さな脂肪の粒が認められる、血だらけの腕の画像。

ボールペンでノートをグチャグチャにした画像。

そして、予想もしていなかった言葉が目に飛び込んできた。


「朋美、絶対に許さない」




…え?




”裏切り者”


”私には朋美しかいなかったのに”


”朋美がいじめを指示してたんだ。最初から私を上げて落とすために近付いた。

信じてたのに。”



朋美は目を疑った。



誤解だ。


なぜ?

なぜそうなる?



私は加担していないし、恨むなら理沙でしょ?


混乱する朋美を置き去りに、その次に流れてきた画像。


―それは、あのお揃いで買ったキーホルダー、ポムりんをカッターでずたずたにした画像だった。


「いやっ…!!!」



朋美は自分のカバンに付けられた同じマスコットとAYAKOのタグを、思わず庭へ投げ捨てた。



心臓がうるさい。

激しく動揺しながら、過去に理沙やその取り巻きが話していた内容がフラッシュバックする。




―――一度深く関わった人に対しての方が反転した時執着がスゴイっていうよね。

ほら、愛憎って表裏一体だし。



―――いじめた本人に復讐って、私ならしないかな。またやり返されたら無限ループだし、むしろ関わりたくないから逃げるかも。



―――内田さんってちょっと思い込みが激しい所あるよね。

一人で勝手に自己完結してて理解追いつかない時ある。





”ねぇ朋美、あんまり思い込み激しいタイプと中途半端に関わんない方がいいよ?”






まさか。





靴箱で理沙と話してたあの時、綾子は私が嫌がらせそれを扇動してるって捉えたとでも言うの?


じゃあ、あの時睨んでたのって――――



考えが着地した朋美の後ろで、雨戸がゆっくりと閉まる音がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オープンハウス 金平糖 @konpe1tou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ