SNS

真実が知りたい。

もはや朋美に仕事の事は頭から抜け落ちていた。

仲が良かった頃、綾子はOwitterをやっていると聞いたことがあった。

アカウント名を聞くと、ばつが悪そうな顔をして教えてくれなかった。

急いでOwitterを開き、検索の虫眼鏡マークをタップする。


「内田綾子」 ……ない。


「坂本理沙」 ……ない。


「中学校名」 ……最近のつぶやきが多すぎる。


ふと、さきほど回収した紙を見る。


「開けたら閉めろ 怖」


「トイレ 開け 閉め」


「開けたら閉め 精神」


「開けたら閉め 強迫」



とにかく思いついた単語を検索していく。


そうしてある一つのつぶやきに辿り着いた。


”お父さん、なんでトイレとか、開けたら閉めてくれないんだろう。

音がうるさくて耐えられない。誰かこっち見てくるし。なんで何とも思わないんだろう”


プロフィール画面に飛ぶと、投稿はちょうど6年前で止まっていた。


――故人のSNSを勝手に漁るなんて。

いや、これがそうだとはまだ分からない。

それに、理沙の言っていた事が本当かどうかの確証もない。

そうだ、もしこれが本人のなら、それを確かめるためにも―



アイコンは真っ黒。

いくら遡ってもひたすら意味の分からないつぶやきが続く。

埒が明かないと考えた朋美は、専用のアプリで古い投稿から見ていくことにした。

綾子は精神を病んでいた。

その前なら、彼女か判断できる正常なつぶやきが見つかるかもしれない。


***


どうやら転校と同時にアカウントを取得したらしい。

知らない学校で新しいクラスメイトと馴染めるかどうか、そんな不安をどこかに吐き出したかったように思え、心を抉られる気がした。

希望的な投稿がその時点で少なかったため、そもそも転校に至った理由を想像するのも難しくない。


しかし、彼女が綾子本人だとの確信はすぐについた。



”仲良しな子ができた。”


”木内さんがすごく面白い。”


”朋美が、他の子とばっかり遊んでつらい。”


”トモとおそろで買った!^ω^”

添えられた画像には、「TOMOMI」のタグと同時にあの「ポムりん」のキーホルダーが撮られていた。


綾子…。

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