真実

「…朋美?聞いてる?」


「えっ、あっ、ごめん。」


つい上の空になってしまった。

今彼女は、何をしているのだろうか。


「…ねぇあy…内田さんってどこ引っ越したか知ってる?」


「誰それ。

……あー。

え、てか内田ってさ……。」


しばしの沈黙のあと、理沙は気まずそうに言った。



「…あの子、もう死んでるよ。」



・・



自殺だったらしい。

引っ越しはその後だ。

表面上は転校という事になっていたらしいが、職員室での教師の会話をたまたま聞いた誰かがくだんの情報を漏らした。

それを知った担任がめちゃくちゃキレて、以後、「口にしてはいけない暗黙のルール」のようになっていたらしい。

ちょうどその時風邪が流行っており、朋美も数日休んでいた。

恐らくあのタイミングでの出来事だろう。

今でも真実を知っている生徒は、当時出席していたものだけという事になる。


朋美はショックと共に、怒りがこみ上げてきた。


「え、え。じゃあそれって絶対アレが原因じゃん。」


「アレって?

てかさ…今更じゃん。

何朋美、やっぱあの子と繋がってたの?」


理沙はとぼけて話題を逸らした。

考えてみれば、もうあのクラス内での力関係は消失している。

コミュニティーを違えた後の理沙に気を遣う必要なんてよく考えるともう、ない。


「言ったよね、いつまでやんのって。さすがにしつこかったでしょ。」


「はあ?じゃああのクラス全員に言ってくんない?

てか、それ言うなら朋美も笑ってたよね。見てただけじゃん。何?偽善者ぶんなって。」


大人になって穏やかになったかと思っていた彼女の口調は、あの頃と同じいわゆるヤンキー口調の片鱗を見せ始めた。

朋美も負けじと反論する。


「でも最初にやり出したのは……」


「だ……らぁ……。

……もうよ…ない?この話。

私こ…後肝試しやんだよね。

ガ…で怖い感…になると楽しめないじゃん。テンション下がっ……


プツッ


ツーツーツー」


・・・


突然、激しいノイズによって通話が切れた。


朋美は愕然とした。



…綾子が自殺。



そんな――


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