もどし屋

@sanaka0624

第1話 死亡通知

俺はさなか、そこら辺にいる

目立たない陰キャな高校生だ。特にこれといった長所も才能も無いまま、今ただ平凡に生きている。

今日、始業式があり俺はいわゆる高校デビューをしたが、

別に大して嬉しくはなかった。

俺の母さんはバカな俺が高校に入れただけでも

心から嬉しかったらしいが、

俺にとって高校に入ったくらいでは大して喜べなかった。それは何故かなんて簡単な話だ、大切な人が今この世にいないからだ。俺にとって大切な人であり、どんな友達よりも大切な存在だった父さんがいない世界なんて、

正直生きてる気分がしなかった。

父さんが何故、どうして死んだのか俺には理解できなかった。小学生だった頃、ある仕事が社会人の中で話題となっていた。

それは人を殺し報酬を得る、「殺し屋」という物だった。勿論そんな馬鹿げたうわさ話を信じたりする奴は一人もおらず、みな冗談や空想と片付け誰もその噂話はしなかった。だが、俺の父さんは何を思ったのか、

殺し屋という仕事に就こうと真面目に考えていた。

もちろん母さんはそんな馬鹿げた仕事に断固反対だった、

「あなた…そんな仕事やめときなさいよ!いくら報酬が多いからって!命を落とすかもしれないのよ!?」

母さんはそう言って、父さんに対し本気で説得していた。それは当時二階にいた俺にすら聞こえる位の声量だった。だが頑固かつ融通が効かないタイプだった

父さんには、そんなも言葉もほぼ馬に念仏だった。

「いいか母さん…聞いてくれ、私はこの仕事に就いてさなかとお前に裕福な暮らしをさせたいんだ。確かに、死んでしまう可能性はある。だが、一発逆転の可能性もあるんだ。希望を捨ててしまえば必ず夢は消えてしまう、だが希望を捨てずに行けば、いつか夢は叶うはずだ。」父さんは母さんを納得させようと、淡々と話進めていた。俺は階段を下り、陰で話しているのを聞いていた。そして父さんは諦めたのか、ドアを開けそのまま一人外へと出掛けていった。

その後、俺は父さんの姿を見た事は無かった。

家に帰ってきてもおらず、どこに行ったのか行方不明なままだった。そして

6月26日にある封筒が届いた、中には紙と1万円が入っていた。母さんにそれを渡すと母さんは紙を読んだ後いきなり泣き崩れ、声を荒げて泣きだし始めてしまったのだ。内容はその時分からなく、後からふすまを開け中身を確認した。俺も(嘘だろ…?)と思いながら声を抑えながら泣いてしまった。その中身は父さんの死亡通知の物だった。

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