第60話 夏江の新しい身分と女体盛り

 夏江は室長に電話した。室長からは,夏江の顔を見て話したいという要望なので,映像チャットで話すことにした。


 夏江「室長,ご無沙汰しています。お元気でしたか?」

 室長「わたしは,相変わらず腰痛があって糖尿病の持病があるくらいだ。元気とまではいかんが,なんとか毎日出勤している。もっとも,職場には誰もいないがな。フフフ」

 夏江「・・・,ともなく元気でなによりです。それで急用とは何ですか?」

 室長「実は,そのことで夏江君と相談したかった」


 室長は,詳しい話を夏江にしていった。そのおおよその内容は,以下のようなものだった。


 ーーー

 ピアロビ顧問は,魔鉱石の採掘権利を持っている。だが,実際に採掘作業を行うのは民間の採掘会社が行う。その採掘現場は福井県のある山奥にある。そこでは,頻繁に事故が起きていたが,これまで表だって公表していなかった。しかし,とうとう事故を隠しきれずに,採掘会社の社長がピアロビ顧問の秘書に泣きついて,事故を未然に防ぐ対策をしてほしいと訴えてきた。


 ピアロビ顧問の秘書役をするのは,新しく警視庁のα隊に配属になった12号だ。女性の職員で名をイロハという。ピアロビ顧問は,しょっちゅう魔界に行っているので留守にしている場合が多い。その期間は,主に千雪組と友好な関係を持つのが仕事だ。最近は,その千雪も魔界に行ってしまったので,最近は,イロハの仕事がほとんどなく暇していた。


 そんな時に採掘会社の社長が,採掘現場で起きている事故の対策をイロハにお願いしてきた。


 イロハにとっては,寝耳に水の依頼だった。ピアロビ顧問に相談しようにも彼はいないし,彼の娘さんも魔界に行っていない。イロハの上司であるα隊隊長に相談したが,彼も超忙しくてそんな些細なことなど構ってられない。


 でも,イロハをほっておくわけにもいかず,警視庁で一番暇している超現象捜査室の室長を紹介した。


 かくして,室長のもとにイロハがやってきて,一度,採掘会社の社長と面談をもってほしいと依頼された。面談くらいならということで,室長は同意した。どうせ暇だし,いい刺激になるかもしれないと思った。


 ーーー


 夏江「それで?具体的にはどのような内容だったのですか?」

 室長「どうやら,採掘に潜った作業員は,最近になって,なにか『霊障』にかかってしまいようになったらしい。最初は,精神科の医者に診てもらったりもしたらしいが,どうやら,そんなレベルの話ではなかったようだ。そこで,わたしは,高野山の高僧を紹介してあげた。それはそれで効果はあったのだが,問題点が出て来た」

 夏江「え?どんな問題ですか?」

 室長「除霊はできるのだが,除霊費用,具体的にはお布施だが,1回1千万かかってしまう。しかも,除霊した作業員がまた採掘現場に潜ると,また霊障にかかってしまった。これではまったく意味が無く,除霊費用だけで利益がすっ飛んでしまい,業務を実行できくなってしまった」

 夏江「まあ,そうでしょうね。それで,室長はどうしたのですか?」

 室長「そこで,社長や現場担当者,さらに高野山の高僧交えて,何度も相談した。その結果,費用を大幅に抑えることができ,かつ,除霊もでき,その効果も持続できるという優れた方法を考え出した」

 夏江「ふん,そんなうまい話,あるわけないでしょ!」

 室長「それがあるんだよ,世の中にはね。やっと,そのホームページが出来たので,まず,そのアドレスを送る。それをしっかりと見てから,もう一度わたしと打ち合わせしてくれるかな?」

 夏江「では,アドレス送ってください。また後で連絡します」


 夏江は送られたホームページを見た。そこには,『除霊師優秀者選抜大会のお知らせ』という見出しがあった。しかも,優勝者には,賞金1億円とあった。2位5000万円,3位2000万円,4位と5位が1000万円だ。6位から10位までが100万円という金額だ。


 この金額を見て夏江は俄然やる気が出た。


 試験内容を見ると,次のような内容だった。


 ーーー

 予選試験:霊障患者を回復させることができる能力者を予選通過とする。尚,判定基準は,霊障患者5名のうち2名以上を正常に回復させることができた者とする。ただし,予選通過の人数が10名を越えた場合,判定基準を大幅に引き上げるものとする。


 本試験:霊障を引き起こす現場に立ち入って,霊障現象を解消できる者を優勝者とする。尚,一位から10位の判定基準は,霊障現象の解決の寄与配分によって決めるものとする。


 その他:参加は個人でもグループでもいいが,賞金の金額は変わらない。

 ーーー


 この内容を見て,大会という名を借りて,賞金金額内で霊障現象や霊障患者を問解決させる狙いだとわかった。

 

 夏江は室長と再び映像チャットを開始した。

 

 夏江「ホームページ見ました。低予算で解決するいい方法ですね。でも,果たしてどれだけ参加してくれますかね?」

 室長「高野山の高僧は,比叡山や修験道,キリスト教関係者にも声をかけると言っていた。賞金がもらえない人にとっては,一種のボランティアになるかもしれんがね」

 夏江「それで,わたしにどうしろというのですか?」

 室長「夏江君は,『巨乳除霊師・夏江』なのでしょう?ぜひ,参加してほしいと思って声をかけたのが,悪かったかな?」

 夏江「わたしの除霊って,うそっこ除霊です。自分ではちゃんとした除霊はできません。わたしが行っても,予選試験にパスするとはとても思えません」

 室長「フフフ。夏江君に決して無駄足はさせないよ。交通費,日当,さらに夏江君に仲間がいれば,その人たちの経費は,すべて,顧問契約の規定の金額を支払いましょう。どうです?いいと思いませんか?」

 夏江「え?それって,正規の顧問契約の仕事として理解していいのですか?」

 室長「そうですよ。なんせ,魔法石の採掘は,半分,国家事業みたいなものです。それに貢献することですから。夏江君に支払う経費なんて,微々たるものです。それに,夏江君は,試験に参加するのではなく,試験の監督者として参加してほしいのです。警察側の代表という身分になります」

 夏江「え?ほんとうですか?」

 室長「はい。それに,なんちゃって身分証明書ではなく,きちんと,正規の警察手帳を夏江君に配布することになりました」

 夏江「ええーーー?? それって,どうしてですか?」

 室長「多留真さんのお陰ですよ。夏江君は,多留真さんに犯人逮捕に繋がる情報をいくつか提供したのでしょう?彼は,その功績は非常に大きいと警視庁長官に申し出て,夏江君の顧問契約料の金額アップ,および夏江君の活動範囲の拡大,さらに,正規の警察手帳の提供まで勝ち取ってくれたんです。つまり,夏江君は,顧問の身分はそのままですが,正規の警察官と言ってもいい立場なのです。あっ,そうそう,顧問とは,顧問契約書での名称ですが,別途,夏江君は,新しく名刺を作ってあげます。『特殊捜査部ゼロ課,特別顧問』という肩書きになります。いいでしょう?」

 夏江「・・・」


 特殊捜査部ゼロ課?? いったいどこからそんな名前が?


 夏江「特殊捜査部ゼロ課?そんな課ってありましたって?」

 室長「フフフ,『超現象捜査室』は,警視庁でもα隊と同じく内密にされている名称なんでね。それで,わたしが適当にそれらしい名前を付けたのだよ。


 夏江君がこのまま実績を積んでくれたら,特別顧問を最高顧問という肩書きになしてあげましょう。それと,その巨乳をネットに晒すのは控えてください。夏江君は,まだ一応警察官なのですから! 


 それと,話は変わりますが,サイバー部門からクレームが来ていて,夏江君のエッチシーンがSNSやHPなどで頻繁にアップロードされていて困っているって言っていましたよ。国内のサーバー会社なら,削除命令を出せれるのでが,海外のサーバーでは無理ですからね。幸い,夏江君は警察を辞めたことになっているので,マスコミは騒いでいません。でも,顧問契約のことがバレたら,ちょっとまずい状況ですよ。その辺,ちょっと考えて行動してください」

 

 そんなこと言われても,AV女優になると決めているし,撮影されてそれを断るようなことはこれまでしてこなった。今後は,ちょっとだけ気を使うことにしよう。だって,金欠な今の状況では,経費全部持ちの仕事はありがたい。


 夏江「わかりました。では,警察の代表として参加させていただきます。それと,部下を3名連れていきます。経費は前払いで200万円ほどになります。それでいいですか?」

 室長「大丈夫ですよ。夏江君の経費など,いくらでも捻出してあげます。それがわたしの仕事ですからね。もし,今回の件でなくても,これまで,多留真さんに提供した案件で,経費が必要なら請求してもいいですよ」

 夏江「ええーー!!♥ ほんとうですか??」

 室長「はい。もちろんです」

 夏江「ありがとうございます!! 室長,愛してまーす!!」

 室長「嬉しい言葉ですね。そんなこと言われたの生まれて初めてです。ともなく,現地には,遅くとも3日後には行ってください。そこで現場担当者と相談して進めてください」

 夏江「わかりましたーー!!ボス!」


 夏江は,室長とのチャットを切った。夏江は,今の身分がとても気に入った。時には警察官,時には魔獣族のマキの部下,そして,時にはAV女優だ。うん,こんな生活も悪くない。


 そう思ったとき,ふと,魔獣族のAV作製会社である孔喜企画のことを思い出した。もうそろそろ1ヶ月になる頃だ。それに,最近は,エッチなこともしておらず自慰もしていない。ちょっとまずいと思ったが,ともなくも,室長の仕事をする前に孔喜企画に行くことにした。


 ー 孔喜企画㈱ ー


 孔喜企画で,いつもようにこの一ヶ月で撮影した映像を提供し,今後1ヶ月で必要とする魔力を指輪に供給した。そして,監督から予想通りの言葉が出た。


 監督「夏江,お前,AV女優としての覚悟はあるのか! 最初こそ,学生とのおっぱいエッチがあるが,それ以降,まともなエッチ映像などひとつもないじゃないか! 自慰映像なんかまったくないぞ!」


 夏江は,うつむき加減にして弱々しく返事した。


 夏江「すいません,,,なかなかエッチや自慰の機会がなくて,,,」

 監督「本来なら,その身を切り刻んで虐待映像をとって死ぬまでの映像を取ってしまうところだ。でも,まあ,おっぱいがほぼ理想型に近づいてきたので,それに免じて期間を延長することで様子を見ることにしよう。ともなく,今から最低半年間はこのまま続ける。その後,2ヶ月間,ここで缶詰になって,夏江の虐待映像を撮る。殺すことまではしない。有能な回復魔法士を準備するから安心しなさい」


 夏江は,約束の期間が伸びたことに文句は言わなかった。約束を破ったのは夏江だからだ。


 夏江「期間が延長するのはいいのですが,その,,,自慰の機会を毎日ではなく,2日に1回くらいに下げてくれますか?」

 

 監督は嫌な顔をしたが,それに同意した。そして,びっくりすることに,夏江に50万円の金一封を渡した。


 監督「このお金は,おっぱいを大きくしたことによる礼金と思ってくれ。そんな巨大なおっぱいでは,歩くのもしんどいだろう?せめてもの,わたしからのささやかなご褒美だ」


 夏江は,超嬉しかった。これでかなり金欠が解消される感じだ。


 夏江「監督,ありがとうございます!!はい,わたし,もっと頑張ります!!」


 かくして,夏江は予想に反して金一封をもらった。彼女は超笑顔で孔喜企画を後にした。


 夏江が去った後,映像係は監督に言った。


 映像係「監督,面白い映像が含まれていましたね」

 監督「ああ,まったくだ。あの映像は,いったいどうやったら撮れるのんだ?」

 映像係「さきほど,画像解析で調べたのですが,あれは,ほんものの映像ではありません。頭のイメージを具現化して指輪に投影したような感じの映像です」

 監督「やはり,そうか!!夏江は,優秀なサイコメトラーということかな?」

 映像係「たぶん,間違いありません。これらの映像をうまく使えば,SF連続ドラマだって編集可能です。しかも,実話ですから!! 月本国のメジャーな放送会社にだって高く売り込みできますよ」

 監督「フフフ。まあ,ともなく,夏江の除霊師としての仕事内容をうまく編集してくれ」

 映像係「はい,任せてください。今回は,60分ドラマで3回分くらいの映像が取れそうです」

 監督「これで,われわれの評価もうなぎ登りにあがるな」

 映像係「はい,これも夏江のおかげです」

 監督「フフフ,まったく面白いおもちゃが手に入ったものだ」

 映像係「難癖を言って,うまく映像期間を延長できましたね。この調子で延長できれば,何年も夏江を縛り付けられますよ」

 監督「もちろんそのつもりだ。今日は,豪華なお寿司料理でも食べるか?」

 映像係「はい,最近入ってきた獣魔族の美人AV女優を同席させましょう。個室なら,彼女を使って女体盛りができますよ」

 監督「おっ,女体盛りか,ひさしぶりだな。よし,それでいこう」



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第7節 夏江が行く ー除霊師編ー @anyun55

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