いつか世界を壊せるように 愛されたはずのヒロインの破滅的な願い
仲仁へび(旧:離久)
第1話
その少女は願う。
闇組織の牢獄で。
光の刺さない闇の世界で。
暗殺の道具として育てられながら。
いつか世界を壊せるように。
世界の全てを壊せるように。
と。
少女のとりまく世界は悲惨で、過酷で、目も当てられない。
救いなど存在しない世界だった。
誰かを犠牲にしなければ生きてはいけない。
誰かを踏み台にしなければ、その時点で自分が命を落としてしまう。
そんな世界だった。
だから少女は、願った。
いつか世界が壊れるように。
苦しみしかない世界が壊れるように。
苦しむだけの世界がなくなるように。
その少女の願いは叶う。
悪の組織で育てられた少女は、同じ境遇にいた、同じ年頃の少年少女の命を犠牲にして生き残った末に、邪神の力で世界を制する。
しかし少女が望んだのは、悪の組織とは違う終着点。
世界制覇などではない。
少女はその力で世界を滅ぼし、人間達も、人間達が築いたものもすべて滅ぼしていった。
そんな少女が、最後に残った自分の命をも滅ぼそうとした時、その少女の前に一人の人間が、異世界からの転生者があらわれた。
「僕は悪役令嬢を愛している。だから悪いけど、愛する彼女が破滅してしまわないように、ヒロインであったはずの君と運命を入れ替えさせてもらった」
少女は本来ならば、闇の世界から助かるはずだった。
ヒロインとして多くの男性から愛され、守られるはずだった。
その後の人生で栄光が約束されていたはずだった。
しかしそうなったのは、悪役であったはずの人間の方。
一人の人間の手によって、ヒロインの運命は捻じ曲げられ、悲惨な人生に書き換えられてしまった。
少女は激高したが、転生者が宿したチート能力によって、返り討ちに遭って命を落とした。
邪神を宿した人間が討伐された後、転生者のチート能力によって隠れ潜み、生き残っていた者達があらわれる。
転生者と、悪役令嬢と、一部の人間達が。
彼等は、力を合わせて世界を再び作り直していった。
「いつか世界を壊せるように」
悪役と運命を入れ替えられてしまったヒロインの願いは、叶わなかった。
いつか世界を壊せるように 愛されたはずのヒロインの破滅的な願い 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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