いつか世界を愛せるように やがて悪役令嬢になる者の祈り
仲仁へび(旧:離久)
第1話
その少女は、祈っていた。
いつか世界を愛せるように、と。
少女の身の回りの環境は過酷だった。
とある名家に迎え入れられた少女は、その家の利益になるように行動し、結果を出さなければならない。
彼女が出す結果は、0であってはいけない。
50や80、99であってもいけない。
必ず100の結果を出さなければいけない。
それが、彼女に期待された唯一のものだった。
だから少女は頑張った。
血のにじむような努力を重ねて。
その努力が報われる時が来ると、そう信じながら。
人を憎んでも意味はないと。
未来を信じて、幸せを求める事こそが尊いのだと。
いつか世界を愛せるように、と。
長い間、一人きりでずっと。
しかし、そんな時はこない。
未来、少女は悪役令嬢となって、断罪され、命を落としてしまうからだ。
そんな少女を哀れんだ神様が、少女の魂に手を差し伸べたけれども、少女はこばんだ。
その時の少女は、もう誰も信用できなくなっていたからだ。
だから神様は、他の世界に手を伸ばした。
いつか悪役令嬢になってしまう少女を、過去にさかのぼって助けてほしいと。
その傷ついた魂を、過去には純粋で優しかった魂を、どうか救済してほしいと。
やがて、その願いにこたえた転生者が、その世界にやってくる。
「いつか世界を愛せるように」
そう願ってやまない、一人の少女の元へ。
「彼女が世界を愛せるように」
やがて悪役令嬢になり、断罪される運命にあった、悲劇の少女の元へ。
いつか世界を愛せるように やがて悪役令嬢になる者の祈り 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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