第42話 片耳難聴(障がい)
ですが、そのときの私には、正直その方の大変さがわかりませんでした。
当時の私は、『片耳が聞こえない』ではなく、まだ『片耳が聞こえる』のだろうという考えでいたからです。
不便ではあるのでしょうが、それほど生活に影響を及ぼすとも、思えませんでした。
それから年月が経ち、とある番組で片耳難聴の人が出ていました。
「片方の耳が聞こえないのがどんなことか、わかってもらえない」
そう言っていたのが、なぜか引っかかったのです。
ただ、テレビ番組は『ろう者全体』を扱ったものだったので、片耳難聴についての詳しい説明はありませんでした。
片耳難聴の医学的診断名は『一側性難聴』と言うそうです。(身体障害者には該当しない為、ほとんどの支援を受けられないとのこと)
片方の耳が聞こえて、もう片方の耳が難聴の状態をいいます。
では、両耳が聞こえるのと、片方の耳しか聞こえないのは、どう違うのでしょう?
単純に、同じ機能のものが、2つあるか、1つだけかの違いでしょうか?
実は、聞こえるのが片耳と両耳では、全く違うのです! ある意味、別物と言っても良いかもしれません。
片耳と両耳の違い。
【音を立体で感じられる】
いつも両耳で聞いていると、意識しないことですが、大切なポイントです。
私たちは、左右の耳に入ってくる『音の大きさ』や『伝達の時間』などから、距離や方向を無意識に測ります。
これには音の『差』が必要なので、片耳ではわかりません。
【立体にした音を、分けて認識できる】
例えば、3人が別々の場所で、それぞれ話をしていたとします。
誰がどこで話しているか、認識するのは前の項で話しました。ここで扱うのは、その更に先です。
特定の人の会話だけを、聞きやすくする力です。逆に、必要でない音を、小さくする機能。それが両耳だとできるのです。
いわゆる『カクテルパーティー効果』というヤツですね。
【聞き逃しが少なくなる】
これは、耳が1つか2つかという単純な話ではありません。
右耳で聞いたものと、左耳で聞いたものでは、入ってくる音や得られる情報が、少し違います。
片方の耳だけですと、そこで終わり。ですが両耳が正常に機能すると、左右の音を総合して、更に『補う』ようです。
『予測』や『予想変換』みたいなものでしょうか?
それによって、聞こえにくい音域や音量、あやふやな発音でも、認識できるのです。
【音量が上がる】
片耳だけだと聞こえにくい音も、両耳だと聞こえる。というと「当たり前じゃん!」と言われそうですが、少し普通とは違うのです。
単純に耳が2つの方が、音を拾いやすいというのではなく『音そのものが大きく聞こえる』効果がはたらくようです。
逆に言うと、片耳では小さめに聞こえます。
※全てが、そうというわけではなく、逆にとても大きく聞こえる場合もあります。
ここまで、片耳と両耳の違いをお話ししてきましたが、では『片耳難聴』の方は、実際にどんなことで困っているのでしょう?
・難聴側で話されると聞こえない。
・片方が聞こえるのだからと、聞き取りにくいことを理解してもらえない。
・普通に話せるので、片耳難聴だと言っても、理解してもらえない。
・聞こえなかっただけなのに、無視したと思われた。
・複数人との会話がわからない。
・集団スポーツが出来ない。
(声がけ、合図が聞き取れない)
・もう片方の耳が聞こえなくなったらと考えると恐い。
・乗り物に酔いやすい。
見ていて気がついたでしょうか?
ほとんどが、まわりの『知らない』や『知ろうとしない』が原因なのです。
理解することは、世界が広がること。
一緒に世界を広げていきましょう。
残念ながら現状で、片耳難聴の方は『障がい者手帳』を取得することはできません。
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