第42話 片耳難聴(障がい)

 片耳難聴かたみみなんちょうという言葉を最初に聞いたのは、もう10年近く前になると思います。テレビを見ていて、そこに出ていた方が、片耳難聴だったのです。

 ですが、そのときの私には、正直その方の大変さがわかりませんでした。


 当時の私は、『片耳が聞こえない』ではなく、まだ『片耳が聞こえる』のだろうという考えでいたからです。

 不便ではあるのでしょうが、それほど生活に影響を及ぼすとも、思えませんでした。


 それから年月が経ち、とある番組で片耳難聴の人が出ていました。

「片方の耳が聞こえないのがどんなことか、わかってもらえない」

 そう言っていたのが、なぜか引っかかったのです。

 ただ、テレビ番組は『ろう者全体』を扱ったものだったので、片耳難聴についての詳しい説明はありませんでした。


 

 片耳難聴の医学的診断名は『一側性難聴』と言うそうです。(身体障害者には該当しない為、ほとんどの支援を受けられないとのこと)

 片方の耳が聞こえて、もう片方の耳が難聴の状態をいいます。

 では、両耳が聞こえるのと、片方の耳しか聞こえないのは、どう違うのでしょう?

 単純に、同じ機能のものが、2つあるか、1つだけかの違いでしょうか?

 実は、聞こえるのが片耳と両耳では、全く違うのです! ある意味、別物と言っても良いかもしれません。


 片耳と両耳の違い。


【音を立体で感じられる】

 いつも両耳で聞いていると、意識しないことですが、大切なポイントです。

 私たちは、左右の耳に入ってくる『音の大きさ』や『伝達の時間』などから、距離や方向を無意識に測ります。

 これには音の『差』が必要なので、片耳ではわかりません。


【立体にした音を、分けて認識できる】

 例えば、3人が別々の場所で、それぞれ話をしていたとします。

 誰がどこで話しているか、認識するのは前の項で話しました。ここで扱うのは、その更に先です。

 特定の人の会話だけを、聞きやすくする力です。逆に、必要でない音を、小さくする機能。それが両耳だとできるのです。

 いわゆる『カクテルパーティー効果』というヤツですね。


【聞き逃しが少なくなる】

 これは、耳が1つか2つかという単純な話ではありません。

 右耳で聞いたものと、左耳で聞いたものでは、入ってくる音や得られる情報が、少し違います。

 片方の耳だけですと、そこで終わり。ですが両耳が正常に機能すると、左右の音を総合して、更に『補う』ようです。

『予測』や『予想変換』みたいなものでしょうか?

 それによって、聞こえにくい音域や音量、あやふやな発音でも、認識できるのです。


【音量が上がる】

 片耳だけだと聞こえにくい音も、両耳だと聞こえる。というと「当たり前じゃん!」と言われそうですが、少し普通とは違うのです。

 単純に耳が2つの方が、音を拾いやすいというのではなく『音そのものが大きく聞こえる』効果がはたらくようです。

 逆に言うと、片耳では小さめに聞こえます。

※全てが、そうというわけではなく、逆にとても大きく聞こえる場合もあります。


 ここまで、片耳と両耳の違いをお話ししてきましたが、では『片耳難聴』の方は、実際にどんなことで困っているのでしょう?


・難聴側で話されると聞こえない。

・片方が聞こえるのだからと、聞き取りにくいことを理解してもらえない。

・普通に話せるので、片耳難聴だと言っても、理解してもらえない。

・聞こえなかっただけなのに、無視したと思われた。

・複数人との会話がわからない。

・集団スポーツが出来ない。

(声がけ、合図が聞き取れない)

・もう片方の耳が聞こえなくなったらと考えると恐い。

・乗り物に酔いやすい。


 見ていて気がついたでしょうか?

 ほとんどが、まわりの『知らない』や『知ろうとしない』が原因なのです。

 理解することは、世界が広がること。


 一緒に世界を広げていきましょう。


 残念ながら現状で、片耳難聴の方は『障がい者手帳』を取得することはできません。

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