第34話 ろう者と老人ホーム
ろう者が安心して入れる老人ホーム。
それが特別なものだと、考えたことはありますか?
私が会員になっていた、手話に関連する団体で、ろう者の為の『デイサービス』を知りました。
(デイサービスとは、日帰りで利用できる通所介護サービスのことです)
なぜ、わざわざ『ろう者の』となっているのか。それは『ろう者』ならではの、事情が関係しています。
ご存知の通り、ろう者の方のコミュニケーション手段は、聴者と異なっているからです。
「ろう者の方を相手にするのだから、手話が出来れば良いんだよね?」と、思われるかもしれません。
もちろん、手話も使えた方が良いでしょう。ですが、手話も『日本手話』と『日本語対応手話』があります。
もっと根本的に話をすると、手話を使えない人もいます。いままでは、
手話ではなく、ゼスチャーやホームサイン(その家庭だけで通じる手話のようなもの)や筆記で、コミュニケーションをとる人もいて、本当に様々です。
手話をされる方も、年配になると動きが小さくなり、省略も多くて、読み取りが困難になります。それに加えて昔の手話は、いわゆる『死語』のようなものも多く、手話(現在の)を知っていても理解できない場合があります。
古い手話の意味がわからないので、聞いたりすると『もういい!』となる場合もあり、凹むこともあるわけです。
介護が出来て、手話も出来て、それ以外の伝達手段でも対応出来る人となると、やはり敷居が高くなってしまいます。
では『ろう者の老人ホーム』は存在するのでしょうか?
実は日本に、10カ所ほどしかないようです。不足していて、入居待ちの間にお亡くなりになる方もいるとか。
老人ホームによって規定は違いますが、ろう者の誰もが入れるわけではありません。
ろう者の方でも、もちろん普通の老人ホームに入ることは出来ます。ただ『ろう者』としてのサポートのないところがほとんど。
他の人とコミュニケーションがとれなかったりするのは当然。スタッフの方ともコミュニケーションがとれないことが多いです。
体調が悪くても伝えられず、伝えて病院に行っても、本人には何の説明も聞かされない(訳す人がいないので)など、良くあることだとか。
他の入居者とも、コミュニケーションが出来ないことにより、誤解が生じてトラブルになることも少なくありません。
ろう者の老人ホームで働くスタッフの中には、ろう者や難聴者が職員として働かれているところもあります。それは、それで、ある意味で正しい形かもしれません。
今回のように特殊な仕事や施設は、ボランティアや寄付などで成り立っているところも多いわけです。
(前述の私が知っているデイサービスも、そうでした)
ですが、そこが独自で利益を得て、寄附無しで稼働しないかぎりは、いつか無くなると思って間違いありません。国を動かして制度を作るというのも、なんだか現実的ではないような気がします。
残念ですが、難しいですね。
そして私は、いつも自分の無力さに気付かされるのです。
いまの私に出来るのは、こうして文章にして、なるべく人に知ってもらうことくらいなのですから。
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