第33話 人工内耳(人工臓器)
はじめに
私は人工内耳にすれば良いとか、リスクがあるからやめた方が良いとか、そういった事を言いたくて、この内容を取りあげるものではありません。
1つの選択肢として、人工内耳の存在を知ってもらうこと。誤解を取り除くと共に、リスクのお話もしていきたいと考えています。
人工内耳(聴覚を補助する器具)については、知らない人もいるでしょう。ろう者、難聴者の中にも、誤解をされている方がいます。
ろう者のお子様に対して、人工内耳という選択すら知らない方もいると聞きました
人工内耳にしようと思っても、出来ない方がいますし、リスクもあります。ただ、知っていて選ばないのと、知らなくて選べないのでは、違うのではないかと思います。
そもそも、人工内耳とは何でしょう?
実は世界で最も普及している『人工臓器』だそうです!
簡単に言うと、音を直接『脳』へ送り込む機械。
頭部に『埋め込む物』と、外に『取り付ける物』を、磁石でくっつける形になります。
(メーカーによって、多少異なります)
仕組みは少し複雑。
外部に取り付けたマイクから集音。それを電気信号に変換して、耳の奥にある蝸牛の中に埋め込んだ電極へ。聴神経を介して脳に送られると、そこで電気信号が音として認識される……という仕組みです。
つまり、普通の音と違って、耳の中を通った音ではありません。ショートカットして、蝸牛からスタートする感じです。
ここまでで、気付いたかと思いますが、人工内耳にするには、頭部に機械を埋め込む必要があるのです。全身麻酔をして行うので、気軽にとはいきません。
少しリスクについて、お話ししておきましょう。
手術を行う事に付随してですが、合併症のリスクがあります。
体に合わない人も、決してゼロではありません。目まいや、吐き気など。
もちろん金銭的な問題もありますね。
普通に手術すれば400万円近く掛かるでしょうか。ただし、医療費助成が出来るので、100万円くらいになる場合もあるとか。
それでも、決して安い物ではありません。
頭に衝撃を受けられない、と言うのもあります。機械が故障する恐れがあるからです。故障すれば、もちろん再手術になります。
人工内耳の手術をするには、両耳が重度の難聴である事も条件の1つです。それだけではなく、内耳中耳などの形態が、人工内耳に合っている必要もあります。
手術をして、人工内耳を取り付けたからといって、そこで終了ではありません。聞くためのリハビリも必要です。
言われてみると納得なのですが、音を『認識』したことが無い脳にとって、音を認識する訓練が必要というわけです。
ですから、幼いときの方が手術は良いとされています。
実際、人工内耳の手術は、年々増加していると共に、低年齢の割合が急激に増加しているのが現状です。
手術をしたからといって、もちろん100%聞こえるようになるわけでもありません。残念ながら、聞こえるようにならない方もいるのは事実です。
なんだか、脅すようなことばかり書いてきましたが、現在ではかなりリスクが減っています。(ここまで書いたことは、どんな手術でも事前にサインさせられる、同意書のようなもの)
人工内耳の利点については、ものすごく沢山あります。(個人差あり)
音がクリアーに聞こえるようになる。
立体的に聞こえるようになる。
雑音の中から、言葉だけを聞き分けることが容易になる。(聞こえる人は、普通にやっていますが、これはスゴイこと)
幼いときから人工内耳を使い、とても良く適合した場合は、聞こえる人と全く同じように、聞いたり話したり出来るようになる。
最後に最大の問題点。
人工内耳の効果が最大限に発揮されるのは、幼少の頃の手術だということがおわかりかと思います。ですが、その頃の本人に、手術内容やリスクを、本当に理解出来るのかということ。これは、恐らく無理でしょう。
結局、決定するのは親御さんになります。
手術して、何年も経たなければ、正解だったかどうかわからないことです。お子さんに恨まれる親御さんも、正直いらっしゃいます。
もちろん、感謝してくれる場合だってあります。
みなさん、かなり悩むそうです。
自分だったらどうするか考えると、とても複雑な気持ちになるのでした。
ただ、苦しめてやろうと思っている人は、誰一人としていないのです。
なので、よけいに苦しいですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます