最終話 本当のお化け屋敷
知らなかった。
この世に化け物がいること。
天国と地獄があること。
私に忘れられない出来事を渡したあの子は、
いつまでも私の味方だろうか。
私には、家族がいない。
生まれたときからいない。
名前もないはずだった。
知らない女の子に会って、
その日から大切な人ができて、
あの子の未来人なんだと思った。
私はあの子の将来で、
私はあの子の過去だった。
だから、お姉ちゃん。
全部同じ私だけど、誰にでも兄弟姉妹がいる。
自分の過去は妹。
過去は今の自分より年下だから。
自分の未来は姉。
未来は今の自分より年上だから。
大時計が光り始めたら地獄の始まり。
終わりの始まり。
自分じゃない誰かが、自分のように化ける。
それが、お”化け”屋敷。
おばけが出るわけじゃない。
化けた人が出てくる。
お化け屋敷じゃなかった。
私の妹は可愛い子だった。
笑顔で見つめる視線の先には私の目があって、
優しさに包まれていった。
私の代だけが狂ってしまって、
私の過去、未来の子が地獄の世界へ連れてきてしまった。
あの数百人は、私の数百年後の私、
数百年前の私がいたはず。
人は数百年も生きられないから、その人の子孫も来ていた。
そうなると辻褄が合う。
この世界で生きて、出会うのは自分じゃない。
2020年を生きている人は、
今も当然その年を生きているし、
2025年を生きている人もその年を生きている。
人類が滅亡するまで。
太陽の寿命が来るまで。
私が死んだらその先の人も死ぬ。
死んでしまわないように、他の人に化ける。
それがお化け屋敷。
化けて生きるためには、
そこまでしないと生きていけない。
辛い世の中は、”ここ”にある。
あの子はすべてを知っていた。
だから、お姉ちゃんと言うんだ。
けれど覚えていくことは許されない。
この時間、この日を。
化け専用のお化け屋敷。
次も誰かが来る。
この、恐ろしい世界に。
お・化・け・屋・敷 るるあ @ruruanoru-ru
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