第16話 家族の場所なんか

「ねえ」

「……なに」


「願いを叶えに来たよ」

「……そっか」


その子は、仮面を外していた。

とても人に似た仮面だったのだ。


仮面だと気付かなかった。

「願いを叶えられるのは、大時計の下だよ」


「みんな大時計の奥にいるよ」

「うん、でもどうして場所を」


「みんなを取り戻すんでしょう?」

「それだけじゃないよ」



「あなたを家族の場所へ戻してあげるから」



「……私に家族などいない」

「いるでしょう?」


「あなただって人間だから」

「でも家族は、!」


「亡くなったんでしょ?」

「知ってるよ。」


「私とあなた、血が繋がってる。」

「知らない?サキって子。」


「……知ってる」

「それ、私。」



「あなたの妹だよ」



「でもね、私の家族に姉はいない。」

「だって私、一人っ子だもん。」



「あなたは魔に支配された悪の子なんだよ。」



「『元姉』の現役悪の子。」

「あなたはここで何年も生きてる。」


「だからあなたは、忘れられてる。」

「戻してあげたいから。」

「だからだよ。」


「……喋れなくなるよ」

「うん、そんなのどうでもいいよ」


「どうして?」

「永遠と話せないなんて嫌でしょ?」

「大丈夫。」



「だって私には大切な姉がいるから。」



「じゃあね」

「……じゃあ、ね、…。」



「今まで殺された子を元に戻して。」

「あの子を本当の人間に戻して。」



「走れサキ!!」

「アイカ!!」


「願いの持続時間は30秒しかない!!」


「全員の手に触れて!!」

「全員なんて、!!」


「サキ!」

「数百人もいるっていうのに!!」


「みんな、早く!!」

「あの子は⁉」


「ほら手に触れて!!」

「助けてあげられなくてごめんね、」


「ごめんね、」

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