第5話人造人間24番オメガ2

「このまま、デルタが見つからなくて、戦闘出動かかったらどうすりゃ良いんだ?アイツの後方支援ないと、俺死ぬぞ。まじで」


 宇宙生物と人類の戦力差はあまりにも大きい。現状、蛇とカエルが戦うようなものだ。勝ち目は無い。

 ただ非戦闘員避難の為、負けると分かっていても、誰かが戦って時間を稼ぐ必要がある。その為に兵士は戦う。勝ち目の無い戦場へ向かう。

 俺が今まで生き残ってこれたのは、戦闘支援型人造人間デルタの、強力な支援があったればこそだ。彼女の的確無比な情報支援のおかげで、毎回撤退に成功している。

 そんなデルタの支援がないと死ぬ。まじで死ぬ。その自覚がある。


「もし、ね〜さんがこのまま見つからなかったら、あっしが戦闘支援を受け持つんで、ドロ船に乗った気でいて下さい」


 えっへんと自慢げに大きな胸を張るオメガ。

 いや、可愛いけれども。おまえ………


「ドロ船かよ」


「そうっすよ。あっし、相方の23番プサイ君。あっしの支援ミスで殺しちゃったし。てへ?あっしには、実は支援した相方を殺してしまった実績あるっすよ」


 ………おい。可愛らしくヘビィな事を言うな。

 なんで自分の黒歴史級の汚点を、誇らしげに語る?


「なんで相方死んで、そんなにあっけらかんとしてるんだ?婚約者だったろ。プサイ?」

「あいつ美系なのを鼻にかけて、一般人と浮気しまくってたし、うぜ〜んすよ。あっしという美人がいるのに、浮気し腐って」


 イタタタタ。胸が痛い。俺にも刺さるよその言葉。てか、絶賛お前自身が、俺の浮気相手中じゃないか。よくそんなセリフ言えるな?


 いやまて。というか。は、コイツもしや浮気が原因で相方を?


「お、おまえ、まさかわざと23番プサイを………」


 ドサクサに紛れてやっちまったのか?と聞こうとすると、


「んな事しね〜すよ。これでも支援用人造人間の、誇りがあります。真面目に全力で支援したっすよ」


「おお、そうか。疑って悪かった」


 一瞬だけ。こいつの性格疑ったわ。コイツは馬鹿っぽい所があるが、性格は明るくて良い奴だったよなぁ。んな、わざと相方殺すような黒い事はしないか。


「単純にあっしが、超無能だったから、プサイ君死んじゃっただけで、わざとじゃね〜っす。もう一回本気出して支援しても、宇宙生物に勝てる気全然しね〜っす。相方死なせね〜自信ね〜っす。無理っすわ、あれ」


 なんだぁ。その駄目な方の自信?おい。コイツは、それでも俺の支援する気満々なのか?

 真面目に怖いんだが?

 コイツに支援される側としたら、無能でプサイ殺してたよりは、わざとプサイ殺してたほうが、まだマシじゃね?


 おい。俺死ぬぞ。このままだと。

 デルタは俺の顔を見て、にぱ〜っと笑う。

 不味い不味い不味い。


「デルター早く帰ってきてくれー。次は俺が、この女に殺される〜」


 やっばいわ、コイツ。オメガ。思ったよりも無能だった。

 俺はコイツ舐めてた。

 コイツたぶん相方死なせない自信ないって、本気で言ってるぞ。つまりオメガの後方支援ナビに従うと、死ぬって事だ。


 かと言って、ナビ無しじゃ、………どっち道、敵に殺される。


 敵は遥かに格上。無敵の宇宙生物。

 人類を滅亡寸前まで追い詰めつつある無敵生物。

 万全な状態で挑んでも、未だに撃破数0。せいぜい進行を遅らせるのがやっとの強敵だ。


「大丈夫すっよ。あっしが、ガンマに〜さんを、死なせはしないっす。あっしプサイ君よりも、ガンマに〜さんのほうが好きですから」


「そ、そうか。ソレはありがとう」


 コイツ戦闘では無能だけど………昔から、可愛い事言うんだよな〜。


「ガンマに〜さんは、あっしよりも、デルタね〜さんの事が、好きかもしれないけれど」


 一転して不穏な空気になった。

 オメガの言葉、それは事実だ。スタイルはともかく、それ以外はデルタのほうが良い。


「お、おい。ソレはそれとして、好きとか嫌いとかで、戦闘支援上手く行くようなものなのか?」


「………最大限、兄貴を死なせないように、できる限り、努力はしてみせるっす。最善を尽くし、死力尽くしてみせるっす。結果は………上手くいかないかも知れないっすけど」


 オメガは、にぱ〜っと幸せそうに笑って、自分の胸を叩く。


「ドロ船に乗った気で、支援任せてくださいっす」


 コイツは可愛い。確かに可愛いが。

 この瞬間。俺は本気で、公開土下座動画を世界に発信する検討をはじめた。

 それでデルタが戻ってきてくれるなら。

 命とプライドどちらを取るか?それが問題だ。

 いや、土下座すべきか?死ぬべきか?かな。


『緊急警報発令。第3種戦闘警戒が発令されます。総員直ちに戦闘準備をはじめてクダサイ』


 ここは人類が絶滅しつつあるデストピアな地球。

 ………そんな猶予は、無かった。







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愛哀悲歌決戦 @kindou

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