絶境通信
深川夏眠
絶境(ぜっきょう)通信
地下牢の歔欷 愚者の声 眠られぬ夜の手すさびタロットカード
長煙管くゆらす煙むらさきの炎色反応 眉間に皺
にごり湯に くちづけすれば血の匂い 冷ややかな猫脚のバスタブ
姿見に映す
凶夢を跋扈するインクブス振り払えば床を這うサラマンダー
お目覚めですか モーニングコーヒー据えて破顔 獄吏の
山猫が威嚇しながら肉を食う 味を覚えて日も浅いゆえ
点水に赤い液体ギヤマンの ゆらゆら気休めのネペンテス
サラバンド めぐる物憂さ 蓄音機 ハンドル回す仕着せの侍童
暇つぶし血糊を詰めた薬莢で戯れのロシアンルーレット
午睡どき 銃眼を射た矢 鴆毒 仰のいた兵が見た
綿毛を撒き飛び跳ねる 奴隷より自由な放し飼いの金絲猴
見上げれば穹窿に褪せたフレスコ 憐れカストールとポルックス
柱廊に見え隠れする亡霊の
黄昏に歩哨の喇叭 鳴り渡る 狼藉者は舌を噛み死ぬ
晩餐はジビエのグリル フォンドヴォー 鹿の剝製うつろな
ひたすらペンを走らせ正気を保つ
忍び寄る牙 皮膚を穿つ真夜中 忌まわしき亜種 背徳の城
隷従の日々 佯狂の夢うつつ 時を忘れた
飢渇感 もはや彼の仲間かとウィジャボードに訊く就眠儀式
絶境通信 深川夏眠 @fukagawanatsumi
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