第15話 エピローグ
出会った頃から彼は優しい人だった。
『お前、俺の奴隷になって俺を守りきれると誓えるか?』
目付きも口も悪い、素直な感情なんて全然口にしてくれない人。
私は生まれつき病気を持っていた。
恐らく大人にはなれない。
それでも彼は私を選んでくれた。
それだけで嬉しかった。
しかも彼は私を購入する時に、大金を用意して病気を治してくれた。
理由を聞いても教えてはくれなかった。
けれど、女神様から元の世界へと強制帰還をさせられた彼に付いて来てようやく分かった。
初恋の相手と似ていたんだろう。
だから助けたくなった。
決して口にはしないけれど。
それが悔しくないと言えば嘘になる。
私は彼女の代用品なのか、と思ってしまう。
けれどそれで良い。
彼が私を必要として、傍に置いてくれるだけで満足だ。
それに、結局ヘタレな彼は彼女の告白に返事を出来ずに病院を後にしたし、まだチャンスだってある。
あの世界では契約的に主人の恋人になる事は出来なかった。
だが奴隷契約の縛りはこの世界に来て弱まりつつある。
主人の命令にあれ程逆らって首が飛ばなかったのが証拠だ。
彼は私が超人だからと言っていたけれど、もしもあの世界であそこまで抵抗していたら確実に死んでいる。
私は彼の為ならいつ死んでも良い。だからあそこまで抵抗した。
私は奴隷だから良いけれど、他人の為に平気で命を懸けるのは金輪際勘弁して欲しい所だ。
──本当に、困った人ですよ……。
既に想いは告げた。
なら私は出会った頃からの命令を忠実に、命尽きるまで実行するだけだ。
今、彼はすやすやと私の安眠魔法によって隣で眠っている。
今から私が何をするかを記憶に残す事はない。
私は彼の体の上に手を置いて、その傍らで目蓋を閉じる。
「一生……あなたのお傍でお守りします。愛してますよ、マスター」
異世界から帰還出来たので魔法やスキルで復讐を誓った……が、待っていたのは相も変わらず底辺陰キャ生活でした。 棘 瑞貴 @togetogemiz
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