草むしり

 庭に出て、草むしりをしている時だった。


「水野くんは、あの人のことをどう思ってるの?」


 唐突な質問にボクは戸惑った。


「どう、って。雇い主だけど」

「あの人、おかしいよ。こんなことさせるなんて」


 やっと服を着た牛河さんが隣で草むしりをする。

 ボクは割と扱いになれているため、せっせと草を毟っていくが、牛河さんからすれば屈辱的なのだろう。


 口を尖らせて、ぶつくさ言っていた。


「まあ、慣れだよ」

「せっかくの夏休みなのに」


 ボクからすれば、食っていけるだけありがたい。

 少ないけど給料は貰えるし、ボクはそこまでミサキさんが嫌いではなかった。


「……とりあえず」


 どう転がるかはわからないけど。

 ミサキさんのご機嫌取りをしながら、食べることを考えていくしかないだろう。


 ボクは草に鎌の刃を当て、地道に刈っていった。

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ボクのご主人様 烏目 ヒツキ @hitsuki333

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