ボクのご主人様

言葉と行動の矛盾

 ミサキさんは優雅に紅茶を飲んでいた。

 ――牛河さんを


「くっ……」

「水野くん。紅茶淹れるの上手くなったわね」

「あ、ありがとうございます」


 牛河さんがものすごい顔をしていた。

 眉間に皺を寄せて、奥歯をギリギリと嚙み合わせ、今にも起き上がってミサキさんに飛び掛かりそうだ。


「……揺らさないで」

「どうして、あなたを乗せないといけないのよ!」

「奴隷だもの。当然じゃない」


 牛河さんは服を着ることが許されなかった。

 なので、体にバスタオルを巻きつけただけで、ほとんど全裸の恰好。

 大きなお尻をペチペチと叩き、ミサキさんは牛河さんの上で足を交差させる。


「インボイス制度って知ってる?」

「え?」


 ミサキさんはスマホを見ながら聞いてきた。


「中小企業潰しってことで有名ね。ウチの会社の場合、大きいけれど、どうなるか分かったものではないわね」


 真面目な話をしながら、大きなお尻をリズミカルに叩き始める。

 叩くたびに、尻には大きな波が打ち、牛河さんが体を震わせる。


「潰れた後はどうなると思う?」

「わ、分からないです」

「海外の会社が入ってくるのよ。あるいは潰れそうな会社を買ったりしてね。技術とか、全部取られちゃうの。あ、水野くん。この子の頭撫でてくれる?」


 言われるがまま、牛河さんの頭を撫でる。


「う、うぅ。……不覚にも、……幸せ……」


 うっとりとした声で、牛河さんが鳴いた。


「これが現代の奴隷制度よね。参っちゃうわ」

「でも、ボクらは学生だし。関係ないんじゃ……」

「あたしたちが目指す夢は、外国の方が気に入らなければ、全てオジャンよ。呑気に構えてる人の場合、ここで慎重になっちゃうから。そういう人たちが気付くのは、……だいたい五年……経ってからかしら」


 牛河さんがお腹に額を擦り付けてきた。

 まるで、犬か何かのようであった。


「例えば、……そうね。好きなドラマがあるとするじゃない。俳優業が経営不振で、どんどん日本の事務所が潰れていくとすれば。本拠地が海外にある外国の事務所は、ノーダメージなのよ。でも、お金を援助したり、癒着ができたりすると、好きでもないドラマばかりが、みんなの意見は無視で流行り続けるの」


 牛河さんが顔を赤らめ、唇でシャツをハムハムしてきた。


「今度は海外の奴隷になるのかしら……」


 なんてことを言いながら、牛河さんの尻に八つ当たりをする。

 牛河さんは尻を叩かれた衝撃で、全身が大きく震えた。

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