第7話 黄玉


 午後からは、お店の手伝いだ。紅音に料理勝負のことを連絡したら『アタシも天津飯てんしんはんを作って、持っていけば良かったかな?』などと返信がくる。


(これだから、中華料理屋の娘は……)


 冗談であるのは理解しているが、流石さすがに今日はもう、卵料理は遠慮したい。

 餃子ぎょうざなら夕飯に欲しいところだ。


 『餃子なら大歓迎!』と私はメッセージを打つ。

 いや、こんなことをしている場合ではなかった。


 お店の制服は決まっていないが一応、私はブラウスに着替え、エプロンを身に着ける。これで少しは店員に見えるだろう。


(まあ、常連さんしか来ないから、大丈夫だけれど……)


 簡単な接客とレジ打ちを担当する。

 大抵は母親とおしゃべりをして帰っていくだけなので、基本的にやることは少ない。


 たまに会話に加わったりもするけれど、二言三言、言葉を返すだけである。

 後は客が居ない時に掃除をするくらいだろうか?


 試着室へ案内することもあるけれど、今日は客が少ないので、母親や店員が担当してくれている。


 春物が終わり、夏物が出てくるのはこれからなので、この時期はこんなモノだろう。丁度、私の休憩時間を見計らったように、姉から連絡がくる。


(もしかして、監視されているのでは?)


 と思わず勘繰かんぐってしまった。どうにも要領を得ないが、相談したいことがあるので『友達を連れてくる』ということのようだ。


 つまりは、私に『夢占い』をして欲しいのだろう。

 正直、お祖母ばあちゃんから教えてもらった程度で『万能』というワケではない。


(適当に喜ぶことを言って、帰ってもらおうかな?)


 そんなことをボンヤリと考え、レジに立っていると姉が友達を連れて帰って来た。

 妹に仕事を押し付けて、友達と遊んでいるとはいいご身分だ。


 ただ文句を言うと倍になって返ってきそうなので、めておく。

 それに、これは私の案件のようだ。


 姉が連れてきた友達。その彼女の頭には、ちょこんと妖精が乗っていた。

 十二の妖精の内の一人『トパーズ』である。


 石言葉は『友情』『希望』『誠実』『潔白』。

 『トパーズ』は和名だと黄玉おうぎょくと呼ばれる。


 その見た目から『かがやかしい未来』や『澄んだ関係性』を表す言葉を人々は連想するようだ。


 夢の所為せいもあってか、漢字の組み合わせから、私としては『卵』を連想してしまう。


 実際は『ホワイトトパーズ』や『ブルートパーズ』など、色の種類カラーバリエーションが豊富な石だ。

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