第4話 緋国の皇帝陛下
隣国の
緋国の民は浅黒く、彫の深い顔立ちが多い。しかし王族は肌が白く、各国の公主を娶るので、金髪の皇子もいれば茶髪に黒髪と顔立ち、瞳の色も様々だった。
夕闇が迫る頃、宴の時間になり呼ばれたので
(噂では、冷酷無比で、気に入らないとすぐ首をはねるとか聞いたけど……)
凛風は鼓動が早くなって、手足が震え、だんだん胃が痛くなってきた。
宰相、官吏たちは一斉に凛風に拱手した。
「遠路遙々、緋国へようこそ。わたしたちは友好の証としてお酒の席を設けました。また華燭の典(結婚の儀式)も盛大に行いたいと思います」
「燿国を歓迎してくださり大変感謝します」
緊張しながら凛風が金の煌びやかな椅子に座る皇帝に揖礼をする。そして顔を上げると、皇帝は
「……え?」
凛風は言葉を失った。
なぜなら先ほど昼間に会った、幼い顔をした美少年だったからだ。
(ええええー。皇帝って、子供だったの? 残虐非道で冷酷無比の氷王は?)
***
「皇帝は十四歳なんですって!」
宴から数日後、
(十四歳だから、わたしより九つ年下ってことよね……)
皇帝が少年だったことに驚いた。
(若き皇帝からしたら、年の離れた姉みたいなものか……。異母弟の
二週間ほど経ち、凛風は落ち着きを取り戻しつつあった。
そして少しずつだが、宮女長の
燿国を発つ前、緋国の妃嬪は数多いると聞いていた。だから普通は後宮でお茶会やら儀式などで会ったりするのだが、全くと言っていい程、妃嬪の声が聞こえない。派閥争いだってあるはず。大国出身のわたしを陥れようとする悪妃だっているだろう。毒を盛ろうとする刺客だっているのかもしれない。早く情報を知っておきたいと思っていたのに、だ。
(まさか、あんな無垢な顔をしていても、妃嬪を亡き者に……?)
そのかわりに、なぜか城から子供や赤子達の甲高い声が響く。
(まさか、あんな無垢な顔をしていても、子供を産んだら妃嬪を亡き者に……?)
心臓が波打つ。凛風はますます悪い方向に考えるようになって胃が痛くなる。そんな時、宮女長の梓晴がやってきて深々と
「凛風さまにお願いがあって参りました」
***
平地で建てられた燿国の後宮と違い、ここは砂漠の国だ。砂に埋もれないよう丘陵に城を築いたのでなだらかな勾配がある。階段を下りると、石畳の広めのバルコニーがあった。階段をさらに下りると、広場になっていて木々が植えてあり、三歳くらいの子供達が走り回っていた。
「こちらにどうぞ」
「はい」
「どう思いますか……」
「どう、とは?」
少し逡巡してから、
「実は、この子供達は凛風さまのように嫁いできた公主たちなのです。皇帝陛下の妃候補でございます」
「……は。え? そうなの⁉」
凛風は驚いて梓晴を二度見した。
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