第2話 公主としての決意
二千年の長い歴史を持つ
軍の指揮を執っていた凛風の異母弟の
鬱蒼と茂る木々、古びた
「なんだここは酷いな。昼間なのに薄暗くて、木が高くて日差しが入らない。池も濁っているし、庭は荒れ放題だな」
「汀州……。久しぶりです。しばらく見ない間に、背も伸びて立派になられましたね」
凛風は汀州を見つけると拱手した。
「敬愛する姉上さま。お久しぶりでございます。長官に聞きました、
「ええ。人気のお茶屋に入ったの。それから布を買いに行ったわ」
凛風は汀州を
「汀州さま。街の露店で買った
「黄色くて、とんがっていて、不思議な形ですね。なんですか?」
「お店の方に尋ねたら、トウモロコシ粉、大豆粉や白砂糖を入れて練って蒸した
楽しそうに小鈴は説明する。
「蒸しパン! それは美味しそうですね。ひとつ頂きます」
「汀州は、甘いものに目がないから」
凛風はうつむきながらも、クスッと笑みを浮かべた。
「やっと笑ってくれましたね」
「……」
「姉上さま。――此度のことは申し訳ありません。わたしの力不足で嫁ぐことになってしまって。しかも緊張状態の緋国。何といっていいか……。しかしこれ以上、兵士の犠牲が増えるのを避けたかった」
汀州は声を詰まらせ黙ってしまった。
「構いませんよ。どうせ他の公主も嫌がったのでしょう? わたしがいなくなって困る人がおりましょうか。それに、ご存じの通り、わたしの母方は紅家。一年前——
「………」
母方は貴族の中でもさらに上級貴族だった紅家。燿国の
「紅家は失墜して、わたしは離宮という名の幽閉。貴族からは笑い者にされ……。城から別の州に出ることも叶わない。このまま年を取って死んでいくはずだった」
『裏切り者には制裁を!!』
『血族には悪夢を!』
あの日——。官吏たちが次々と紅家の者を捕らえ、従兄に近しい者たちは処罰された。凛風はしばらく玻璃宮に閉じ込められた。
(わたし、何もしていないのに……)
涙が出そうになり手で顔を覆った。
(―—でも、この先、どう生きたところで血族の罪は消えない。もともと内乱がある前からわたしは、空気のような存在だった……)
汀州は凛風に手巾を渡す。
「姉上さま……。本来なら紅家は一族郎党皆殺しです。姉上が今、玻璃宮にいられるのは現陛下の恩情なんだ。これ以上、手を差し伸べれば今度は陛下が批判にさらされる。だから――」
「わかっております。悲観してないわ。ただ息を殺して静かに過ごすだけなら、生きる理由を見いだせないでいた。それに、もしかして緋国なら道が開けるかもしれない。陛下に生かされたのであれば、燿国の役に立ちたい――」
「姉上……」
「わたしは和睦を結ぶため、緋国に嫁ぎます」
凛風は汀州に
***
―—半年後、
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