第十話 弟子探し シールド・オブ・カスレフティス(前編)

 今日で弟子探し最終日【AW】製品版サービス開始当日一日前、何とか予定通り四人の弟子をそろえられそうだ。


〔マスター。最後の方はどういったヒトなのですか?〕


 最後の弟子との待ち合わせ場所へ向かう途中、昨日ぶりのヤシロの質問が飛んでくる。


「どんな?多分お前も知ってる奴だと思うぞ。プレイヤーネームはパリィっていって結構有名なプロだ。」

〔パリィ‥‥‥クローズドβのプレイヤーですね。お知り合いだったんですか?〕

「ああ、過去に何度か別のゲームで一緒に暴れた仲だな。要するに戦友ってやつだ。」


 パリィはさっきも言った通り俺が中学時代に知り合ったプロゲーマーだ。今は確か、風間コーポレーション専属のプロゲーマーになってクローズドβのテストプレイヤーをしていたとこの前久しぶりに会ったときに聞いたからな、試しに頼んでみたら快く了承してくれた。


「種族は幻獣族の霊亀種でちょうど四つの種族すべてに仙術を使えるようにできる。」

〔そうですね、予定通りですか?〕

「そうだね、それもその種族それぞれでトップクラスの実力を持ったプレイヤーだ。」

「いや、なぜに確信をしているのだ。」

〔⁉〕

「よお、こっちでは初めましてだなプレイヤーネームはドール=ヴォルージだ。相変らず速いな待ってろって言ったんだが?」

「いやぁ、ただ待ってるのも暇だったものでな、迎えに来てやったぞ。」

「別に要らんのだけど。つか、めんどくさいしここで習得してもらう。」

「そうだな、俺も早い方がいいな。」

「んじゃ、仙術の基本三つを教えるぞ。」

「了解した。」

〔ち、ちょっとなんか話速すぎません?いつもだったら仙術習得までいろいろありましたよね?〕

「そりゃあ、あの三人と違ってこいつはそれなりに付き合いが長いからなあ‥‥‥。」

「改めて思うと結構な腐れ縁だと思うな。」

「確かにな、初めて会ったのが中一んときだったからなあそれから三年くらいの付き合いだな‥‥‥。」

「一緒にレイドバトルをしたときはお前の指揮能力には何度も助けられたな。」

「それだったら、俺だってお前の速さと防御力によく助けられたよ、こっちで協力するときも当てにしてるぞ。」

「お互い様だ。」

「じゃあ、まず【仙術:闘気】からだ。自分の魂氣お前の場合は呪力を水飴みたいに練ってみろ。」

「ふむ‥‥‥うん、できたぞ。」

「おし、じゃあ次は瞬動と縮地な。【仙術:瞬動】は体の動きを加速させる。【仙術:縮地】は現在地から目的地までの距離を縮める術だ。闘気を使ってやってみろ。」

〔え⁉説明短くありません?〕

「まあ、こいつにはこんぐらいで十分だよ。」

「加速に距離の短縮‥‥‥よし、いけるな。」

〔ええ⁉〕

「お!じゃあやってみろ。」

「【仙術:瞬動】」


 パリィは教えてすぐに闘気を習得したので、すぐに瞬動と縮地を教えた、というか使わせた。

うん、知ってはいたけど呑み込みの速さは俺並みだな、やっぱこいつは‥‥‥


「次行くぞ、【仙術:縮地】」

〔うえぇええ!〕

「どうしたんだ?ヤシロ。さっきからうるさいぞ。」

「いや、空間認識能力や計算能力の高い怪異族のヤクモさんならわかりますけど、幻獣族は優れた五感と悪魔と同等の筋力です。【瞬動】ならともかくとして、【縮地】は正確な位置の把握が必要なはずですが?」

「まあ、パリィのセンスは俺並みだからなぁ‥‥‥理由には何となく心当たりがあるけど、一般的にみるとあいつのセンスは常軌を逸しているからな。」



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 最後の弟子、幻獣族霊亀種のパリィが登場しました。とりあえずはこれでメインキャラが一応そろいました。彼らとは、時には仲間として手を取り合い、時に敵として欺き合う。そんな関係になっていきます。

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ダンス・ウィズ・ソールズ 酒井剛一 @SionMitimine

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